観光地が静まり返っている。外国人たちだけでなく、日本人観光客までどこかに消えてしまった。これでは観光地のホテルが成り立つわけがない。そこで急きょ、行われようとしているのが“投げ売り”ならぬ“投げ宿泊”で、赤字覚悟の“宿泊料金”でお出迎えする作戦。何しろ、京都などインバウンドで潤っていたホテルの3月の稼働率は30%くらいまで落ち込むと見られている。本来であれば、そういう時こそ国内の観光客を呼び込みたいところだが、全体的に自粛ムードで多少安くしたくらいでは客室が埋まらない。外人観光客で潤っていた地域のホテルほど“がら空き状態”が顕著になっている。こういう状態が何カ月も続けば、間違いなくギブアップせざるを得ない。実はホテル業界には、もう一つの問題が控えている。オリンピック・パラリンピックが予定通り行われるのかどうかだ。現在、急ピッチで東京五輪を当て込んでオープン予定のホテル建設が進められている。通常通りに開催されるとすれば、5月くらいまでに建物を竣工させ、6月中には家具・備品類の納入を終えていなければならない。ところが、これら新規ホテルの多くが、その内装材や照明器具やトイレ便器やベッドなどの多くを中国に発注している。本来なら既に届いているそれらの製品が“疫病騒ぎ”でストップになっているのだ。製造ラインそのものがフル稼働できない状態らしい。したがって、ホテル外観の建設自体は完了しても、家具なしのまま夏場を迎えなければならないかもしれないのだ。しかも、急いでオープンに間に合わせたとしても、予定されていた宿泊客たちが来てくれるかどうか、という根本的な問題もある。五輪の開催自体を“危ぶむ”声も多くなってきた。つまり、既存の稼働しているホテルも“がら空き状態”で、新規のホテルも“家具なし状態”で、完成前から“閑古鳥”で窮地に追い込まれそうなのがホテル業界なのだ。ここ数年、インバウンド需要で潤ってきたホテル業界だが、思わぬ「敵」の出現で今や“風前の灯火”といった状態にある。
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