日本における四柱(子平)推命学の歴史の始まりは、それほど遠いものではありません。

それどころか、西洋占星術が日本国内に採り入れられた年代よりも、四柱(子平)推命が日本国内に採り入れられた年代の方が、はるかに遅いのです。どのくらい遅いのかというと、おおよそ700年ほど遅いでしょうか。ただ、西洋占星術の方は一時期、完全に命脈が断たれているので“空白期間”が長く、そのため四柱推命よりも後から入ってきた占術であるかのように誤解されているのです。

解りやすくするため、主要研究家の特徴などを比較しやすいよう箇条書きとします。

桜田虎門

『推命書』全三巻 1818年刊 / 仙台藩の漢学者

中国の「淵海子平」の和訳書だが、実占書ではなく誤訳と省略が多い内容の書。“長崎の蘭法医”という説もあるが、実際は仙台藩お抱えの漢学者だったらしい。この人には『五行易指南』の著書(訳書)もあるが、実占家と言える人物ではない。

松本義亮

『四柱推命奥儀秘伝録』全五巻 1902年刊 / 「天祥館」創設の実占家

独学で中国の古書「淵海子平」と「星平会海」を研究。
日本の風土に合った「子平」を完成させ、「四柱推命」と名付けて実践した。
1908年、長崎から大阪に居を移し、以後80歳で死亡するまで普及に努めた。

山岸乾斎

『推命宝鑑』全三巻 1907年刊 / 真言宗の僧侶

四国出身。おそらく独学で中国の「淵海子平」や「星平会海」を研究。
「淵海子平」の解説書とも言うべき内容の『推命宝鑑』を最初に出版。
「星平会海」の解説書とも言うべき内容の『造化之枢機』を後に出版。

伊藤耕月

『実地研究・四柱推命秘伝書』全三巻 1912年刊 / 京都に「神祥館」創設

鳥取県出身。印刷業を営みながら、松本義亮に師事。
その後、「天祥館」との間でトラブルが生じ、やがて裁判沙汰にまでなった。
『四柱推命秘伝書』の内容は、松本氏の著書とほぼ同様で、新たな研究はない。

阿部泰山

『四柱推命学大奥秘伝』 1924年刊 / 『阿部泰山全集』全22巻が有名

淡路島出身。京都の自宅で定期的に推命学の講習会を開き、門人の育成に努めた。
門人の中から実占家として活躍した人も多い。本人は研究と普及を主としていた。
『阿部泰山全集』は推命だけでなく「紫微斗数」や「六壬神課」も含んでいた。

高木 乗

『生まれ日の神秘・四柱推命学』 1930年刊 / 「命理学会」創設

新聞記者出身で、確かご子息の早世が発端で、推命学を研究し始めたらしい。
やがて、関東では彼が主宰する「命理学会」が、推命学の一大勢力となっていく。
彼が発行し続けた月刊誌「人」も、推命学の全国的な普及という点で一役買った。

中村文聡

『波動命理学』 1936年刊 / 「日本運命学会」創設

18歳で家を飛び出し、21歳で『人相と手相の神秘』を出版、一躍有名となった。
四柱推命関連では『推命判断秘法』で、推命学における自身の研究を集大成。
中国の原書『韋氏推命学講義』や『新命理探原』の和訳も行い、普及に努めた。

宇田川豊弘

『四柱推命学大奥秘』全十二巻 1946年刊 / 「弘聖會」創設

キリスト教系の「日本エホバ教団」と深く関係している人物らしい。
最初は四柱推命に対し『紫苑議定書』という謎の書名を与えている。
四柱推命とは別に『運命学の科学的研究』という姓名学主体の著書もある。

石橋菊子

『四柱真髄推命の秘訣』 1947年刊 / 石橋方象学院創設

阿部泰山に学ぶ。その後、比較的早く独立して石橋方象学院を創設。
1936年に中国の推命家・陳耕山原著『新訳・三才発秘』全三巻を訳出・出版。
関西における推命学の普及にも大いに貢献。多数の門人・実占家を育成。

増永篤彦

『新推命学』上下巻 1951年刊 / 日本心理学会員

京都大学・大学院卒。臨床的性格学の研究を兼ね、実証的に四柱推命を研究。
数多くの珍しい実例命式を著書に掲載。『推命実例鑑定要訣』の著書もある。
心理学者として『人の研究』、『性格の発見』、『性格入門』等も刊行している。

西川 満

『人間の星』1959年刊詩人・小説家・算命家

会津若松市出身だが、幼くして父親の関係で台湾に渡り、台湾の新聞記者となる。
その後、『台湾風土記』等発表。小説家として第22回直木賞候補ともなっている。
算命学にも造詣深く『千里眼算命』、『人間の星奥の奥』、『星の連環神示』がある。

火山博幽

『高等推命哲学口伝』 1964年刊 / 推命行動哲学研究所創設

推命学を通じての「行動哲学」というものを打ち立てようとしていた形跡がある。
他にも『推命百法解論』や『推命追判断幽義』等の独自研究書も出している。
また、内容不明ながら『占法要訣奇弁抜粋』という著作も発表している。

板井祖山

『命運を拓く・四柱推命学入門』 1965年刊 / 関西拠点の推命家

実占主体の推命学研究家。自らの波乱に満ちた前半生から推命家を志した。
『四柱推命学奥儀』、『四柱推命学応用』、『四柱推命学の叡知』と独自色を強めた。
基本は阿部泰山方式。本格的な研究書としては『推命学真解精義』がある。

佐藤六龍

『四柱推命術奥義』 1966年刊 / 運命学専門出版「香草社」創立

大阪出身だが東京を母体として活躍。新聞記者が前身。多数の師に付いた。
台湾の張耀文と組み「中国・透派」に継承されてきた占術を広く普及させた。
箱入りの『四柱推命十干秘解』、『四柱推命術密儀』、『四柱推命術極秘伝』等多数。

加藤普品

『子平真詮和解』 1968年刊 / 現「聖至会」創設

漢文に精通した実占型の推命研究家。中国の推命家からも高い評価を受ける。
『子平真詮精解』の著作もある。活躍中の丹藤龍則や山口荘令の門人を育てた。
断易においても「普品流断易」として独自色を打ち出している。

朝田啓郷

『推命学の革新』全二巻 1970年刊 / 「日本推命学会」創設

実業家としても成功した人物で、推命学のデータを集めるため財産を投じた。
その成果として表したのが『推命学の革新』及び『革新推命学入門』であった。
月刊誌「推命学界」も発行し、推命学の実占的な研究・啓蒙に精力的に挑んだ。

内田明道

『四柱推命術』 1972年刊 / 独自理論を展開する実占家

最初は「黒潮太平児」、次に「内田勝郎」、最後に「内田明道」と名乗った。
終戦後シベリアで捕虜としての生活期間が長く、運命を研究する発端となった。
『四柱推命の原理と暦』、『四柱推命不老学』、『四柱推命占い』等の著作がある。

武田考玄

『滴天髄和解大全』全四巻 1973年刊 / 「日本命理学会」創設

放送プロデューサーを経て、推命学の本格的講座を開設、多数の門下生を育てた。
徹底した“科学的理論”が売りだが、多少理論に溺れ過ぎの感が否めない。
『考玄命稿集』では、不明な生れ時刻を“勝手に創作”して命式を出している。

中田青山

『通変星喜忌選別法』 1976年刊 / 「命理研鑽会」創設

「滴天髄」、「窮通宝鑑」、「子平真詮」等、主に中国原書の和訳本を手掛ける。
四柱推命の普及を目的とした『命理入門』全十三巻を継続的に執筆し続けた。
彼の書籍は基本的に“手書き”ガリ版刷りで、実占生活に基づいている。

中井瑛祐

『中国推命術』 1977年刊 / 「中井運命学教室」創設

16歳のとき、高木乗の推命学の著作を読み、運命学の本格的研究を志す。
主に中国原書を頼りに独学で推命学を学ぶ。理論に傾かず、実例研究にも熱心。
研究者向けの『四柱推命実験録』の著作もある。『大六壬占術』も執筆している。

安田 靖

『実践四柱推命学』 1978年刊 / 「日本推命学研究所」創設

初代・高木乗に学んで、実業家から推命家に転身。各地に推命学教室を開く。
通信教育用「四柱推命学ビデオ」や、「四柱推命干支早見表」も制作する。
やがて『五行推命学』を出版、五行主体の独自の見方を確立し普及させる。

槇 玉淑

『天徳占星術入門』 1979年刊 / 虎門流推命学の研究家

小中学校教師を経て占術家となる。推命学では、何故か「虎門流」を名乗った。
実例主体の推命学実占が特徴。『羊刃殺入門』、『健康推命入門』等の著作もある。
女性向けに書き上げた『女の四柱推命』や『愛の四柱推命』も興味深い。

高尾義政

『原典算命学大系』全十一巻 1980年刊 / 「朱学院」創設

中国の戦国時代に起源をもつという「鬼谷子算命学」の第十三代宗家とされる。
長崎に亡命した中国人算命家・呉仁和から、膨大な体系を伝授されたと言われる。
専門書はべらぼうに高価だが、『天中殺算命占術』など廉価の入門書もある。

亀石厓風

『四柱推命学事典』 1980年刊 / 「大乗推命学会」創設

現代風にアレンジした四柱推命学を展開。全国各地に推命学教室を開く。
『四柱推命学現代看法』や『四柱推命学看命辞典』は類を見ないような大書。
その一方で、『こんな男と結婚するな』、『玉の輿で大開運』など入門書も多数。

西澤宥綜

『命譜春秋』 1981年刊 / 「五立命学会」創設

暦法の研究家でもある。また、推命学の学術的観点からの研究にも優れる。
手書きであり、高価だが、資料として貴重な研究書を多数出版している。
『現代命譜総覧』、『計量推命学・看法』、『癌の推命看法』等の専門的書籍がある。

鮑 黎明

『中国命理枢要』 1983年刊 / 「中華星相学会」創設

日本に亡命した父と、新聞記者だった母との間に生まれ、十代から占術に親しむ。
どちらかというと「紫微斗数」や「風水」の方で注目すべき研究・著作が多い。
推命書としては『先天八字大占術』、『桃花運―愛の占い』等の入門書もある。

北条一鴻

『三元四柱推命』 1986年刊 / 諸葛流四柱推命継承者

自らの占術・著作を“諸葛孔明からの真伝”とし、その継承者と自認する。
「奇門遁甲」がメインの研究家で、孔明等の中国兵法の研究から入っている。
どの流派とも異なる“命式の立て方”で、「命宮」を求めるのが一番の特徴。

翠 真佑

『男と女の宿命星』 1986年刊 / 「真佑会」創設

夫の仕事の関係で東南アジア滞在中に、中国正統の「命主占法」を伝授される。
専門書として『中国命理四柱推命』の著書もあるが、優しい実用書執筆が多い。
古神道研究家でもあり「箱根九頭龍神社」の発揮人。政界・財界に信者が多数。

阿藤秀夫

『透派秘伝―子平大法』 1995年刊 / 「古代中国運命学研究所」創設

「阿藤大昇」の別名も持つ。明治大学でフランス文学を専攻。緯書の研究家。
中国占術の歴史的文献を収集、整理、比較研究を行い、独自の解釈で実占研究。
『三命奇談・滴天髄』、『子平管見』、『子平の体系』など歴史的にも貴重な占術書。