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今日の迷言・余言・禁言

未来と運命に対するヒントがいっぱい


「タトゥ」のように「ハンコ」を求める欧米人


わたしが好きだったTVドラマ「オスマン帝国外伝」では、大変に興味あるシーンが何回も出て来た。自分の言葉の証明としての“印鑑”を押すシーン、そしてその書簡を運び“巻物入れ(日本の賞状入れの筒)”が手渡されるシーンだ。さしずめ現代なら、サインをしたメールが届くのに似た状況だが、歴史ドラマの上での“印鑑”と“書簡”は、それとは比べ物にならないほどの重要性を帯びていた。だから蠟を垂らして、その上に印鑑を押す形式だが、それだけ手間暇がかかり、簡単には偽造が出来ない。古代から中世にかけては、いや近代までか……そういう形で“約束事”や“決定事項”は伝達された。われわれだって考えてみれば、20年ほど前までは日常の中で、ふつうに朱肉を使う印鑑が使用されていた。ところが、ここ数年、その印鑑は窮地に立っている。もはや「ハンコの時代ではない」ということで、忘れられそうになっている。ところがである。いま一部の印鑑屋さんでは外国人客で“大賑わい”なのだ。どうしてかというと、アルファベットを漢字の当て字で作製する印鑑(ハンコ)が“お土産”として大うけだからだ。都内のある印鑑店は、現在、来客の八割が外国人客であるという。その場で、欧米名に相応しい“当て字としての漢字”を択んであげて30分で製作する。このスピーディーな対応も“お土産”として持って来いなのだ。わたしは昔、香港に旅行した時、印鑑店で自分の名前入り印鑑を作成してもらったが、小さい割にけっこう高額だった。現代の日本の“お土産用印鑑”は、比較的大きめで“本来のサイン”も下に一体化させて実用性を加味してある。つまり、それを使えば、日本国内でも通用する形式に作ってある。もっとも、購入者の多くは自分専用の何かに押して、サイン代わりとして使用したがる。まるで「日本」が“脱印鑑”に向かうのはと真逆に“脱サイン”用として、重要な持ち物などに使おうとしている。その感覚は、欧米の若者たちが趣味的な感覚で「タトゥ」を身体に入れるのとどこか共通な雰囲気が感じられる。或る意味では、同じような“彫り物”であった。そして“一生もの”でもあった。自己主張の強い彼らが、自分専用の印鑑を持ちたいと思うのは、考えてみればおかしな現象ではなかった。もっとも「タトゥ」と同じように、ときどき“意味としておかしい文字”を用いようとするから、その点は教えてあげた方が良い気がするのだが……。
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