このところ膠着感の強かった“ドル円相場”が動き始めている。ドル円は、春先に私が指摘したように「日銀」の“様子見姿勢”が手玉に取られて“円高方向”へと一気に加速し、120円前後だったのが100円まで上昇した。その結果、日本株は低迷し、景気減速へと拍車をかけた。“ドル円相場”は、そのまま“日本株相場”に直結し、株価下落は日本経済の“先行き”に“赤信号”を点滅させる。そういう意味で“ドル円相場”は、一般の人が思う以上に“日本経済の先行き”を左右しているのだ。このところ、ドル円は100円~101円を前後していて、或る意味、膠着状態が続いていた。ところが、ここ何日かで1ドル=103円まで静かに下落した。この“静かに下落”というのが重要で、つまりニュースなどに大きく取り上げられることなく“動き始めた”ことに意義がある。これは特別な政策変更などがないのに、つまり“目立った材料”がないのに動き始めていくことで、こういう形で動く時が“転換期”となりやすいのだ。どうして動き始めたのかというと、投機筋がしびれを切らして“方針転換”し始めたからである。どうしても100円付近で膠着してしまうなら、今度は一気に“円安方向”へポジションを転換しようとしているのだ。こういう場合、ヘッジファンドは“先を行く”。その方が大きく儲けられるからだ。今はまだ103円前後だがヘッジファンドが見据えているのは110円前後だと思う。それも年末あたりを意識しての数字だ。これまで日銀は、日銀なりの方法で“円安誘導”を何度もトライした。けれどもトレンドは変えられず、円高が進むばかりだった。今度は特別努力しなくても、じわじわと“円安方向”へと動き始めることだろう。日本経済にとって、これほどうれしいことはない。こうして年末あたりに1ドル=110円前後まで達していたなら、アベノミクスのもたらした成果だとか、日銀の努力の結果だとか、的外れの評価をする人たちが、必ず出てくるに違いない。
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