日本人以外の観光客でごった返すようになってきている京都で、各施設が頭を悩ませている問題として「京都新聞」が“入れ墨”について論じている。近年、欧米ではファッションとしての“タトゥ”が大流行である。当然、観光客にも“タトゥ”を入れている人たちが多い。それに対して日本の主要観光施設、プール、海水浴場、公衆浴場、温泉、トレーニングジムなどでは基本的に「入館お断り」を表示しているところが多い。それは多くの日本人にとって“タトゥ=入れ墨=刺青=極道”と結びつくイメージが強いからだ。江戸時代には「刑罰」として“入れ墨”を施す風習もあった。そういう時代を経ているので「好ましくない」印象を抱いている人が多いのかもしれない。私が幼い頃は、育った地域が“危ない所”だったせいなのか、銭湯へいくと必ず大勢の“刺青男”たちに囲まれた。なにしろ、比率として6割くらいの男たちが“刺青姿”だったのだ。けれども、そういう人達の中に入っていくことを、私は“怖い”とは思わなかった。それが何を意味するものなのかを当時は知らなかったからだ。それに、そういう人達は概して親切だった。むしろ私は、それぞれの“刺青”の違いや美しさに興味を持った。だから黙って見つめていた。たまに「こいつ何見てんだよ」という風な視線を向ける“若い衆”もいたが、それだけだった。あれから何十年も経った。世の中は変わり、どの温泉に行っても、もはや“刺青姿”の人を見ることは無くなった。正直に言うと、少し寂しい。だから海外でタトゥがブームになって、どちらかというと“アート”とか“ファッション”に近い感覚でユニークで華やかな図柄が描かれているのを見ると、そういうものに“極道”をイメージする方が不謹慎な気もする。今後、オリンピックとか、万博とか、海外から多くの人達がやって来る。入浴施設などでは、知らずにやってくる観光客を断るのではなく「タトゥ隠し」というものが売られているのだから、そういうものを事前に施設側で用意して、多少料金に上乗せして渡せば良いのではないだろうか。大昔の日本では、つまり「卑弥呼の時代」には、男性の誰もが“入れ墨”を入れていた。中国で書かれた『魏志倭人伝』には《男子は大人子供の区別なく、みな顔と身体に入れ墨をしている》と記述されている。それによって身分の尊卑を表わしたらしい。我が国は“そういう国”だったのだ。
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