大坂の中津に、その本屋さんはあるという。書店というより“本屋さん”という感じの古い2階建てだ。「ローカルメディア&シェア本棚 はっち」という奇妙な店名だ。社団法人ワオンプロジェクトの田中冬一郎氏が運営している。1階は文字通り“シェア本棚”で、狭いスペースに区切って各古書店が間借りしている。2階は自由に持ち帰れるフリーペーパーばかり200種類以上を取り揃えて置いている。平日の20時より営業というのが残念だが、フリーペーパーで利益は出ないのだから仕方がない。それにしても200種類以上のフリーペーパーが並ぶというのは、興味深い。大昔、私の友人がフリーペーパーの編集をやっていたのを思い出す。彼はまだフリーペーパーの編集を悩みながらやっているのだろうか。それとも、まったく関係のない仕事に変えてしまっているだろうか。よく高級美容室とか高級カフェとかで、やたら分厚くて重い雑誌が置かれている。大抵は婦人向け、それも“生活にゆとりある”婦人向けで、写真が多くて文字の少ない趣味的な雑誌だ。そういう高価な雑誌とは対照的なのが無料の薄いフリーペーパーである。私は、そのどちらにも目を通す。写真は分厚い高価な雑誌に良いものが多い。文章はどちらかと言えばマニアックなフリーペーパーの方が興味深い。それにしても、フリーペーパーだけを200種類以上も置いているのは社団法人だから出来ることなのだろう。最近は、どの書店へ行っても同じ雑誌、同じ書籍しか目につかない。毎日、途方もない数の雑誌や書籍が生れているのに、通常の書店で扱うのは“同じ雑誌”“同じ書籍”ばかりである。こんなに一冊の書籍に“広いスペース”を使うのなら、もっとさまざまな書籍も並べてやれば良いのに…といつも思う。書店というのは“売れそうもない本”は送られてきても書棚に並べようともせず、返本してしまう。だから、そういう本が“売れない”のは当たり前なのである。しかも、それを決めるのは店長だったり、そのコーナーの担当者だったりする。もちろん、読んで決めているわけではない。大きな出版社から出ているか、人気ある作家であるかどうか、それだけが選別対象なのだ。
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