昔から「吸血鬼」の存在は物語などで知られているが、実際には“存在しない”ような幻想を持っていた。けれども、どうやら「人間の“生き血”を吸って生きていく」吸血鬼は実在するものであるらしい。ケニアのナイロビで16歳の時から5年間に13人の子供たちを誘拐し、“白い粉”や“白い液体”を使って意識を失わせ、そのあと静脈が浮き出ているところに噛みつき、血を吸う方法で殺害していたのがマスティン・ワンジャーラ容疑者(20歳)だ。彼は最初、子供たちに自分はサッカー教室のコーチだと言って近づき、個人的に教えてあげると言って誘惑する方法を用いていた。“白い粉”が何なのか明らかになっていないが、子供たちが意識を失ったところで「吸血鬼」へと変身する。16歳の時に“生き血”を吸うことの悦びを覚えた彼は、2人、3人と繰り返していくうちに、もう“それ”無しには生きていけないようになった。文字通り「吸血鬼」となったのだ。摑まっても反省の気持ちは皆無で、“生き血”を吸う悦びには逆らえなかった。彼が収監されていた刑務所は独房で3人の看守が眼を光らせていた。ところが、彼に対して判決が下されることになっていた前日10月12日の夜に、マスティン容疑者は忽然と姿をくらましたのである。どこも破られたり、壊されたりしていないので、もしかすると容疑者は看守の手招きによって“脱獄できた”と推論された。だが看守たちは、3人とも強くそれを否定している。消えてしまったのは認めているが、自分たちは直接関与していないというのだ。彼が脱獄してから故郷で“撲殺遺体”となって発見されるまで、2日間“空白の時間”がある。何故なのかはともかく彼はどうにか脱獄に成功したのち、実家のある故郷へと向かったのか。村人たちの証言が確かなら、容疑者は実家近くで発見され、逃げようとしたところ大勢の群衆に取り囲まれ、殴る蹴るの暴行を受けて、血だらけになって死んでいったということになる。私には“何かがおかしい”と感じられてならない。もしかすると「吸血鬼」に裁判で話されては困る事情があって、誰かが彼の口を塞ぐべく判決前日に殺害したのではないだろうか。
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