欧州とアメリカにも進出していた「ZOZO」が“ゾゾスーツ”の失敗で撤退をすることが報道された。もちろん国内でも“大不評”で鉄壁に見えた「ZOZOTOWN」も今期は創業以来初めての“減益”となった。同社の株価も急降下である。昨年まで「時代の寵児」として華やかな“恋愛模様”を報告していた前澤友作氏だったが、一気に窮地に追い込まれてしまった。人間というのは誰でも、強運な時には自分に“低迷期が訪れる”などとはつゆほども思わない。けれども「運命」とは人知を超えたところにあって、どのような人でもこれを超えられない。そこに「運命」を研究する価値がある。ところで「ゾゾスーツ」はどうして失敗したのだろうか。前澤氏は多分「絶対に成功する」と読んでいたはずだ。それは誰もが家に居ながら、独りで自分の体形にピッタリのスーツを注文することが出来る「夢の商品」だったはずだからだ。ところが、彼には読み違えている部分があった。その一つは、本当の金持ちはそもそも通販でスーツなどは買わないからである。だから“安い”とか“早い”とか“独りで”とか“自宅内で”とか、そういう“謳い文句”は意味がないのだ。彼はおそらく反論するだろう。「金持ちなど最初からターゲットにしていない。われわれが着て欲しいのは若い単身の人たちだ」ところが、欧米でスーツを着こなしているのは、若くても金持ちの人達なのである。日本でもたくさんスーツを持っているのは若くても“金銭に余裕のある”人達なのだ。つまり、根本的に多数の注文を得るには、若くても“経済力のある人たち”を狙わなければいけない。利益の出る商売にはならないのだ。一生のうち2~3着のスーツしか持たず“着まわす”ような人たちを相手にスーツを作っては儲けられないのだ。しかも、ゾゾスーツには“致命的な欠点”があった。正面はきちんと寸法を計れるのだが、背面はきちんと計れない。したがって、正面から見ればピッタリでも、背面から見ればピッタリとならない。これではかえって格好が悪い。それに、誰もが“ピッタリとしたスーツ”を望んでいるわけではない。人によっては体形的に“ピッタリスーツ”を嫌う人達もいる。さらにスーツには流行というものもある。現在は“ピッタリ”が流行っていたとしても、将来的にはやり続けるという保証はない。これらを彼は計算に入れていなかった。同じようなことは世界初の「全自動衣類折りたたみ機」を開発したセブンドリーマーズ・ラボトラーズ社の破産手続き開始にも言える。これも「夢の商品」として大いに注目を集めたものだった。確かに、衣類折りたたみ機は素晴らしいのだが、果たしてこれを購入する人たちとはどういう人達なのか、ここでも本当の金持ちはこの商品を購入したりしない。自分でたたまなくても誰かがたたんでくれるからだ。そうすると“家族の多い主婦”くらいしかニーズがない。ところが、そういう人達は手早いのが常だ。おそらく機械より手早い。しかも、たたむだけでは片付かない。それらも自動でできるなら価値があるが、それは出来ない。つまり「夢の商品」は案外“面倒な商品”だったのだ。
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