何かと派手な話題ばかりが注目される“プロスポーツの世界”だが、実際にはプロとして十分に活躍できないまま「戦力外」の通告を受ける人たちも多い。プロ野球では今年“113人が戦力外”の通告を受けた。つまり、来年からは契約を結びません、という球団からの連絡である。早い話が“リストラ”である。しかもプロ野球選手の場合、入団2~3年目でもその可能性がある。二十代前半でリストラされてしまう可能性があるのだ。そのあとの人生が長い。しかも、それまで“野球一筋”で生きて来たような選手が多い。プロになることができて喜んだのも束の間、戦力外となったその日から“出遅れた就活”が始まるのだ。そういう意味では、一流企業から“プロ指名”を受けたその日から、実際には“苦難の人生”が始まっていく人たちもいる。プロ指名を受けるくらいだから、そこそこの力量や技術は当然持っている。地元では活躍していた選手なのだ。そういうケースは何も“プロスポーツ選手”にかぎらない。通常の企業でも、入社できたその時点では“特別な差”は存在していないのだ。それなのに、何年か経過すると、明らかに差が生まれる。中には早期に“自主退職”する人もいれば“早期リストラ”の対象となる人もいる。但し、そういう人たちが、すべて能力がないのかと言えば決してそうではない。むしろ、素晴らしい素質や能力を秘めていることも多いのだ。プロ野球・横浜やオリックス球団で何年かプレーした選手に水尾嘉孝氏がいる。彼の場合、肘痛や腰痛が出てきたせいもあって、比較的早期に引退した。その後、一からの“出直し”を誓って、十年計画でイタリア料理の世界に入門、技術を身に着けていった。そして現在、東京・自由が丘でオーナーシェフとして店を構えている。どのような世界でも、そこだけに「人生」があるわけではない。大きな挫折は“人間的魅力”を生む原水なのだ。その世界だけにこだわりすぎると、せっかくの“新たなる世界”を目隠ししてしまう危険もあると知っておきたい。
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