ややこしい事件というのがある。昨日「無罪判決」が下されたのは“二件の殺人事件”に対してである。それも、自らが手紙の中で“告白”してきた殺人なのだ。つまり自分が20年以上前に殺していたと“懺悔的に告白”してきた事件なのだ。ところが今回は二件とも“無罪”。どうしてかというと虚偽の可能性が強いからなのだ。しかも、告白したはずの本人が「身に覚えがない」と否定している。関係者のほとんどが死亡している。これでは捌きようがない。しかも、告白してきた本人は「死刑囚」である。だから、仮に今回の事件が認められ、殺人を犯していたとしても、“新たなる刑”は付け加えられない。日本の刑法によって、死刑囚に対しては、それ以外の刑を施行しないことが決まっているからだ。それなら何で裁判など開くのかと言えば、未解決の事件では当然被害者家族が居て、“真相”を知りたがっているからだ。また警察側としても、今後のために“事件の真相”を知っておくことは有意義だからだ。だが本人が否定してしまったのではどうしようもない。手紙では確かに49歳の会社社長は自らが殺し、60歳の不動産業者は部下に指示して殺したと記していたのに…。この死刑囚、実は元暴力団会長・矢野治である。だから、その可能性は十分にあるのだ。それでも、実にあっさりと「無罪」で結審した。これには理由がある。実は、彼の告白とされるものが出されたのは、死刑が確定して後なのである。したがって「刑執行の引き延ばし作戦なのではないか」というのが裁判官の観方なのだ。確かに矢野被告ももう69歳。こうやって裁判を続けていれば、そのうち黙っていても病死する可能性がある。新たな殺人事件の告白をしたのが4年前、一応の審議に4年も掛かっている。それにしても、彼は実際の裁判法廷内では「告白はすべて虚偽」で身に覚えがありません…と、その手紙内容を否定している。その部分が、私には解からない。もしかすると彼の関係者に頼まれて、誰かが告白を偽装した可能性でもあるのだろうか。いずれにしろ、実際に殺されたまま未だ犯人も解らず、どうしてなのかさえ解からない、未解決の殺人被害者が、そして時間が止まったままの家族が沢山いることを、われわれは忘れてはならない。
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