そうそう浦島太郎の物語です。あの人、どうしたんでしたっけ? 我慢できずに「玉手箱」を開けてしまったんですよね。そうして、おじいさんになっちゃった。それでこちらは、現代の「玉手箱」を開けてしまった人なんですが「太郎浦勇二」というんです。もちろん、本名が「太郎浦」なのですよ。実はこの人、去年まで弁護士だったんです。でも「玉手箱」を開けてしまったので、今は“弁護士剥奪”です。それでもって、もう73歳のおじいさんになっちゃいました。やっぱり「玉手箱」は開けちゃいけません。ん?「玉手箱」ですか? そりゃ、乙姫の女性達から預けられた“遺産”ですよ。この人、二つ口座を持っていて、その一つは業務用…つまり資産管理用の口座です。そこに、乙姫様は自分が亡くなったら頼むわね、と遺産を移し替えてくれるのですよ。そして“死人に口なし”ですから、それを今度は自分の個人用口座の方へと…何しろ「玉手箱」ですから、そりゃ、開けてみたくなりますよ。ところがですね、最初の方は1億3000万円だったのですが、遺族というものがおりまして、還してくれ、というんですよ。もちろん「玉手箱」ですから、還せません。そしたら“弁護士資格剥奪”ですよ。ひどいと思いませんか。それでもって、もう一人の乙姫様は遺族はいなかったのに、お寺の方に口頭で「死後はお寺に寄付する」と伝えておりまして、それを気付かなかったのですよ。だから、こちらは1億6000万円ですが、警察の方に知れまして御用となったのです。いやあ“死人に口有り”だったのですよ。え? どうして「玉手箱」を開けてしまったのかって? それはですね。何しろ、竜宮城から戻って間もないものですから、ちょっと浮かれていたというか、株の信用取引で大きな損失が出たのですよ。それで、つい「追徴金」というやつを請求されまして「玉手箱」から引き出してしまったのですよ。だから、還せといわれても、もう無いんですよ。乙姫様たちは「玉手箱」を渡す時に確かにおっしゃいました。冗談っぽく「開けちゃいけませんよ」「ご安心を。大切に保管します」そう言って受け取ったのに、ついつい開けてしまった自分が情けない、ということで「太郎浦」は、容疑を認めている。
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