世の中には、時々自らの「運命」に逆らおうとする人がいる。時として、それは「神」への挑戦、或いは「神」への冒涜ではないか、と思える行動を促す。今回の閣僚人事で“総務相”に内定した野田聖子議員などもその一人だ。彼女は政治家だが、私は別に“政治家としての野田聖子”をどうこう言うつもりはない。大変に“政治家向き”な人物ではあると思う。例えば、眉間の広さ…女性では滅多に見受けられないくらいの広さを持っている。こういう人相は、度量が大きく部下・後輩が付いてくる。政治家や実業家として、人を率いていくのにふさわしい相だ。ただ何度も言うが、ここでは政治家・野田聖子を扱うのではなく、“人間・野田聖子”或いは“女性・野田聖子”を扱うのだ。なぜなら、自らの不妊体質を乗り越えて、命を懸けて子宮摘出までしながら出産し、障害児を産んで子育てし続けているからだ。彼女が最初に“事実婚”をしたのは40歳の時であるが、それからずっと不妊治療や流産を繰り返した。やがて初婚の相手と別れたが、すぐ別な男性と“事実婚”(後に入籍)して、再び不妊治療に乗り出す。そして体外受精14回、50歳にして出産をした。しかも、アメリカ女性の“卵子提供”を得ての妊娠・出産であった。もちろん、この間のことはマスコミでも各種紹介され、自らも『私は産みたい』という著書としてまとめた。不妊治療とか、体外受精とかは女性の身体に負担が掛かる。さらに年齢的な限界というものもある。加えて“障害児となる確率”も高くなる。さまざまな理由から、通常は或る程度の年数や年齢が来るとあきらめる。ところが、彼女はあきらめなかった。結果的に彼女は“瀕死の障害児”を得、自らの子宮を失った。世間的にも、一部の人達から相当なバッシングを受けた。けれども、“強い母親”は「神」に逆らい「運命」に逆らって、強引に“命”をもぎ取った。実際に出産した児は、不安視された通りに重い障害を抱え、今後もそれは続く。「神」も「運命」も、“健常児”は授けようとしなかった。それでも母親としての喜びを噛みしめ、生れてから2年以上も病院で過ごさなければならなかった“か弱い生命”を今後も慈しみ育てていく。その決意は揺るがない。或る意味で、これほど“強い女性”はいない。そうなのだ。「神」も「運命」も、それに逆らおうとする者を容易に許したりはしない。けれども、粘り強く、自らの命と引き換えにしてでも“獲得しようとする熱意”に、いわば根負けするような形で“求めるもの”を与える。これが「運命」の実態なのだ。
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