世の中には“珍事”というものが時々起こる。いったん完全に“経営破たん”して、もう貸したお金や預けたお金は取り戻せない、となっていたはずなのに、いつの間にか“おまけがついて戻って来る”ことになったのが「MTGOX(マウントゴックス)」という企業の債権者たちだ。どういうことなのかというと、この会社「ビットコイン」などを扱う“仮想通貨”の取引所だった。ところが2014年2月に突如破たんした。管理していた75万ビットコインと28億の預託金とを消失してしまったというのだ。これら総計を当時のレートで日本円に換算すると470億円相当になる。その当時は、まだ“仮想通貨”はあまり一般にはなじみがなかった。日本企業ではあったのだが、社長はフランス人であり、債権者の9割以上が外国人だった。だから、大きな事件だった割にはマスコミは大々的に報道しなかった。その後の調査によると、ロシア人にハッキングされたらしい。こうして、マウントゴックス社は消えてしまうかに見えた。ところが、昨年になって“仮想通貨”にはバブルが来た。一時期は1ビットコインが200万円近くにまで高騰した。実は、マウントゴックス社はすべてのビットコインを失ったのではなかった。奇跡的に20万ビットコインが残されていたのだ。そこで、債権者の中から“民事再生に切り替えたい”という人が出て来て、東京地裁も22日、民事再生手続きの開始決定を下したのだ。そうすると、どうなるのかというと、残っていたビットコインは現在のレートに換算すると最低でも1200億円以上の価値となり、470億円失っても、痛くも痒くもない状態となる。こうして、いったん完全に“破たん”した企業だったが、奇妙な形で再生できることになったのだ。もし、これが年初くらいに換金されていれば4000億円にもなっていたはずで、最近、次々と“仮想通貨取引所”が業務改善命令を受けているが、5~6年前から営業していたところは、すさまじい儲けを手にしていることになる。
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