われわれは普段、あまり自分の“血縁”ということについて深くは考えない。例えば私は十五歳の時、母親から「お前は本当は長男なんだよ」と教えられた。けれども、私には、それがどういう意味なのか、本当のところよく分からなかった。ぽかんとしていた。「私の長男は、あなたなのよ」母親はなぜか涙を流した。それでも、私には、それがどういうことなのか、よく分からなかった。母親は父の後妻であった。それを知ったからと言って、私には何の変化もなかった。ただ八歳年上の兄が、別なお母さんの子だったんだと、ぼんやり思っただけであった。実際、その後でも、私の場合は実兄に関して、特別な感情を抱いたことはない。普通の兄弟としての兄でしかない。私は特殊なのだろうか。このほど、日本初の匿名第三者の卵子提供による子供が誕生したという。そして、これから順次、そういう子が産れて来るらしい。ところが、それに対して“異”を唱えている女性がいた。その女性は、匿名の精子提供で産れてきている女性だった。彼女の場合、母親からそれを知らされた時、不安や怒りの感情でいっぱいだったという。父親が無精子症だったということが、許せない気持ちを与えたらしい。彼女は大学院を止め、引きこもったという。やがて同じように“精子提供で産れた仲間たち”を知って、そのトラウマから脱することが出来たのだという。だから理解を示すのではなく、だから反対らしいのだ。卵子の無い母親、精子の無い父親、それらを許せない気持ちになる…或いは、それなのに子供を得ようとしたことが許せないのか。「長男」だといわれて何も感じなかった私は、今、初婚の妻と離婚して長女と逢えなくなったが、その長女は私のことをどう思っているだろう。もし、私の“血”を受け継いでいるなら、特別どうということもなく“変わった人”との印象を抱いているに違いない。
世の中は変わっていく。だから、その変化にわれわれも付いていかなければならない。それは頭で解かっているのだが、身体はなかなか付いていけない。ローソンが一部店舗で「完全無人の店舗」を展 続きを読む
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誰でも、自分の未来が“良いもの”であって欲しいと思う。それは万人に共通している。ただ、それが“万人にやって来るか”というと、それは違っていて、やって来る人もいれば、やって来ない人も 続きを読む