誰にでも「過去」はある。時には“触れてはならない過去”もある。日本でも年末になると、普段は「宝くじ」を購入しない人が、不意に思いついて“宝くじ売り場”に並んだりする。この人も、そういう人の一人だった。そして、その“思いつき”が、わずか1400円の籤(くじ)で、5億6000万円の当選金を射止めることになる。彼女はイギリスで25年以上もタクシードライバーをしていた。イギリスにおける“運転手”の社会的地位は、日本などと比べるとはるかに高い。そういう意味では長年にわたって“名誉ある仕事”を続けて来たのだ。ところが「宝くじ」が、彼女の人生を変える。まず、長年続けていた運転手の仕事を辞めてしまった。そして、もう一つ、奇妙な行動に出た。疎遠となっていた子供達に逢おうとしたのだ。なぜ奇妙なのかというと、実は彼女はトランスジェンダーで、元々は“男性”だったからだ。父親が途中から“女性”に変わっていったのだから、子供達との関係がギクシャクし始めたのも当然といえば当然なのだった。それに彼女メリッサ・エド(58歳)氏には、既にパートナーとして生活しているレイチェル・ネルソン(28歳)氏という年下男性の存在もあった。二人は宝くじで得たお金で新居も購入していた。そういう状態の中で、なぜか“疎遠となっていた”4人の子供達に逢いたいと願ったのだ。しかも、既に大人となっている子供達から「お父さん、戻ってきてほしい」という言葉を聞きたいと願ったのだ。この人は「過去」というものをどう考えていたのだろうか。百歩譲って、私も親として「逢いたい」という気持ちはわかる。けれども、この人の場合、子供達からしてみれば“父親”から“女性”に変わっていき、あげくは自ら“出て行った人”だ。そして現在は昔からの仕事も辞め、宝くじで当てたお金で新居を購入し、20歳も年下の男性をパートナーとしている。そういう人に「お父さん」とは言えないだろう。「戻ってきてほしい」とは思わないだろう。それが、どうしてわからないのだろう。けれども「戻ってきてほしい」とは誰も言わなかったが、マスコミの協力もあって「子供達と逢いたい」という願いは果たすことが出来たのだ。ところが、5億6000万円当選から一年半が経った今年5月6日、彼女は急に“胸苦しさ”に襲われた。心臓発作かも知れないと病院へ駆けつけたが、どこも何でもないと診断された。けれども“胸苦しさ”は翌日も続いた。彼女は「その時が来た」とうわごとのように口走った。あまりの異様さに緊急入院となった。そして苦しみ続けて原因不明のまま5月11日に亡くなったのだ。私は、かつて作家の戸川昌子氏がエッセイで書いていた《過去は幻、今だけが信じられるものなのである》という言葉を思い出した。もし、彼女がタクシードライバーを続けて、パートナーとの生活だけを守り通したなら、別な人生が待っていたような気がする。“過去”をも手に入れようと追いかけ始めた時、運命の扉が音を立てて崩れたのだ。
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