今年3月、2年間の監禁生活から少女が脱出して、当時大学生だった寺内被告が逮捕された事件の初公判が開始された。誘拐された当初、中学1年生だった少女は、解放されて半年たった現在も「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」に苦しんでいるらしい。当然と言える。この事件は、誘拐による監禁生活によって「PTSD」が引き起こされたが、このような障害がもたらされるのは、必ずしも“誘拐”や“監禁”だけに限らない。大きな災難や事故、恐怖の事件や出来事に遭遇した場合にも引き起こされる。突然の大きな地震や津波、噴火や洪水、動物からの攻撃、強制労働、集団リンチ、惨殺場面の目撃などによっても生じることがある。確かに、どれも脳裏に残された場面がフラッシュバックしそうな出来事ばかりである。このような病症に陥った場合、その記憶にあるものを消し去ることができれば一番良いのだが、完全に消えなくても記憶が薄れれば病症としては回復していく。実は“運命的な出来事”を体験している場合にも、同じような現象が生じる。例えば、幼い頃に両親が離婚し、家族が別々に引き離され、悲惨な生活を強いられたような場合、“結婚”そのものに対しての拒絶感や恐怖感のようなものが植えつけられやすい。どんなに愛する相手がそばにいても“いつかは離れ離れになってしまう”のではないかという気持ちが無くならない。極端に嫉妬深くなるとか、独占欲が強まって、相手の行動を疑い、自ら愛情生活を破壊していくようなケースが少なくない。極端に“辛いこと”“苦しかったこと”“悲しかったこと”“悲惨だった”過去の出来事は、黙っていても潜在意識が“思い出の扉”を閉めてくれる。そうすることで、われわれが前を向いて生きられるよう配慮されているのだ。時々、そういう扉を無理にこじ開けようとする人がいるが、明るく生きるには“悪い記憶”をフラッシュバックさせてはならない。
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