人にはそれぞれ「イメージ」というものがある。例えば「180㎝で巨漢の女装者」と言われたなら、あなたは誰をイメージするだろうか。多くの人がマツコ・デラックス氏を想起するに違いない。彼は180㎝まで背が高くないかもしれないが、それに近い身長はありそうな気がする。それに何よりも、女装者には珍しく巨漢である。同じように180㎝で巨漢の女装者がいた。彼の名は寺本康博(50歳)。元々は防衛省のエリートであった。けれども彼は8年前、都内の銭湯で女装のまま女湯の脱衣所で座っているところで発覚し、逃走して逮捕された。あまりにも座ったままだったので、不審に思われたのだ。その後、父親に連れられ、この銭湯にやって来て、大変に迷惑をかけたと詫びた。父親は北海道に連れ戻し、一から出直させると話していた。それから8年、彼は全く同じ方法で、今度は札幌の銭湯で女装姿で捕まった。しかも、今度は女湯の中で約50分間も湯の中に居て、出てきた脱衣所の中でブラジャーのつけ方がおかしかったので発覚してしまった。確かに、ブラジャーは着け方が難しいのかもしれない。人間、慣れていないことは手間取るものだ。それにしても180㎝で巨漢の彼が入浴中に誰にも気付かれなかったことは、或る意味“やり遂げた感”があり、それで気が緩んでしまったのかもしれない。彼は「男湯は汚い、女湯の方が安らぐ」と述べたそうだが、一見、見過ごしてしまいがちだが、この言葉の中に“彼の真実”が潜んでいるよう私には思われる。彼は元々、防衛省のエリートだったが、そこで彼は“出世競争の醜さ”を見てしまったに違いない。だから「男湯は汚い」なのだ。元々、彼の中に“女性への幻想”があるに違いなく、そこに自分も“同化していきたい”という願望がある。だから長い時間、黙って湯船の中で“同化”させることが出来たに違いない。けれども、彼は180㎝の巨漢、マツコ・デラックス氏のように“愛されるキャラクター”ではなかった。もし、同じことをマツコ・デラックス氏が行ったとしたらどうだろう。女性達はきゃあきゃあ言って周りに集まってくるかもしれない。おそらく誰も彼を咎めないだろう。犯人の寺本は現在パート従業員。エリートだった面影はない。警察では「覗き目的」と処理されたが、実際には、覗かれることを必死に恐れていただけだった。
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