「業(ごう)」という言葉にはさまざまな解釈がある。「仕事・職業」という解釈もあるし「日頃の行い」という解釈もあるし「過去世の報い」的な解釈もある。とにかく運命的なニュアンスの強い言葉ではある。時々ピアニストには、この“業”としてピアニストという職業に就いているような人たちがいる。西川悟平氏(45歳)も、そういう一人だ。とは言っても「盲目のピアニスト」として有名な辻井伸行氏ほどの“運命的な歩み”でもない。辻井氏の場合は、先天的に盲目で生まれて、けれども幼少期からピアノの音に対する天才的な閃きがあった。それを察知した母親が幼少期からつきっきりでその才能に磨きをかけ、世界的なピアニストにまで育てた。ピアノの鍵盤が見えないというのも“決定的に不利な条件”からのスタートだが、同じように不利な条件として、“指が動かない”という条件もある。西川悟平氏の場合、ピアノの本格的な練習は15歳から始めた。通常、幼少期からスタートする音楽の世界では極めて遅い。それでも1日に8時間から10時間という猛練習のお陰で徐々に頭角を現し、やがて24歳の時には単独でニューヨークへと渡り、ピアニストとしてのデビューを飾った。或る意味、順調なスタートだったと言える。けれども、その2年後に悲劇が訪れる。或る日、突然、指が動かなくなったのだ。ジストニアという神経疾患で、医師からは「もう一生ピアノは弾けません」と宣告されてしまった。そのショックは大きく、一時的にはうつ病にもなった。けれども、西川氏はあきらめなかった。左手は中指、薬指、小指と曲がって動かない。動くのは親指と人差し指。それも、ようやく動く程度だ。右手の方も、最初は動かなかったが徐々に動くようになった。結果的には7本指だけで何んとかピアノを弾こうと決心したのだ。死に物狂いの練習が始まる。けれども、元々、人よりスタートが遅かった彼は、天才ではなかった彼は、努力によって“7本指で弾く”ことに成功し出したのだ。もし彼が幼少期から天才的に弾くことが出来た人物なら、このような病気になって、医師からもあきらめるよう勧められ、努力を放棄したに違いない。けれども、ダメ元で頑張った成果は、7年後に実った。私が一番言いたいのはこの部分で、プロだった彼でも、一から出直すのに7年間かかったのだ。それでも、あきらめなかった彼は今、祖父母が眠る倉敷市でリサイタルが開けるまでになった。彼が「7本指のピアニスト」として改めてニューヨークで迎えられる少し前、父親や母親は相次いで亡くなっている。
オリンピックを「平和の祭典」というふうな表現をしていたのはいつだったろう。いや、今でもだろうか。まさか、もう誰もそんなことは信じない。いろいろな意味で、オリンピックは汚れてしまった 続きを読む
ときどき“ややこしいこと”をする人がいる。そしてそれが妙に注目を集めて、欧米においては“寵児”として人気者になったりするケースも多い。そういう人物の一人が「アヤ・ナカムラ」だ。果た 続きを読む
わたしは動物たちに関して詳しくないのでわからないが、犬は「飼い主」を求める性質を持ち、猫は「飼われた家」を求める性質を持つ、ということは知っている。つまり、どこまでも飼い主を捜し求 続きを読む
国家の“経済運営”に大きな役割を果たすのが中央銀行の「利上げ」と「利下げ」の決断だ。現在、その「利上げ・利下げ」の両方で、日本とアメリカ…それぞれに“決断の時”が訪れようとしている 続きを読む
近年、アスリートたちの“早熟化”が進んでいる。あらゆるスポーツの分野で、幼い頃からの“英才教育”とでもいうか、特別指導が行われていて、それが実を結んで、早くからその能力を存分に発揮 続きを読む
世間の9割方が、今回の米大統領選は「トランプで勝負あった」と見ていたのに、ここにきてバイデン現大統領が「撤退」を表明。現副大統領である「カマラ・ハリス女史を推す‼」と方針転換した、 続きを読む
“時代の変化”はどうしようもなく、やって来る。それは誰しもが経験することで、どの年齢の人たちもが、いずれは感じるようになる。問題は、その変化に“自分を合わせて”生きて行けるかだ。こ 続きを読む
異常気象というのは、時として思いもかけぬ「発見」をもたらす。ブラジル南部を襲ったのは記録的な豪雨だった。それによって多数の地域で洪水とか土砂崩れなどが起こったのだが、それによって視 続きを読む
その名前は確かに父親が日本人であることを物語っていた。ファビオ・トシロウ・キクオ氏(42歳)は、6年間交際した相手であるブルーナ・ビジャリーニさんとの結婚式を無事に終え、翌々日には 続きを読む
第171回目の直木賞が、一穂ミチ氏に決まったという。最初は同人誌でボーイズラブ小説を手掛けていて、それが編集者の眼に止まり、近年、一般小説に転向していった作家らしい。それは良いのだ 続きを読む