またしてもイギリスでテロ事件が起きた。今年3月下旬にロンドンの議事堂に近いウエストミンスター橋で車両と刃物による攻撃で60人近くが死傷した。続いて5月22日にはマンチェスターのコンサート会場で爆弾攻撃で140人近くが死傷した。そして6月3日、今度はロンドン橋とバラマーケット付近で車両と刃物による攻撃で55人が死傷した。すべてイスラム過激思想の持ち主たちによる“無差別テロ攻撃”である。今回の場合、通報を受けて8分以内に容疑者3人はロンドン警察により射殺されている。あまりにも短期間に、多数の死傷者を出すテロ事件が、大勢人が集まる都会のど真ん中を狙って繰り返されている。元々6年間、テロ事件を扱う部門の責任者だったメイ首相は、今回も事件後ただちに“イスラム過激主義者たちの監視を強化する”と宣言した。その監視対象者は2万人以上とも言われる。それにしても、どうして“イスラム原理主義=イスラム過激主義”では、このようなテロを容認するのであろうか。今回の犯人も「アラーの神のため」と叫んで通行人を滅多刺しにしていたという。日本人には理解しにくい信仰・思想である。実は、彼らは“民族の勝利”というものを第一に掲げる信仰形態を持っている。“民族の勝利”が先で、“自分の勝利=自分の幸福”は後なのだ。なぜなのかというと“神に帰依している”からである。解かりやすく言うと、アラブの民族こそ自分たちの“信仰の源”であり、そこには当然“アラブの神”が居る。その“アラブの神”に帰依しているのが自分たちなのだ。「帰依する」とは、神と一体になることであり、神が“悦ぶこと”或いは“望むこと”を行うことである。したがって、アラブの神が最も望んでいるのは“他民族の神に負けない”ことであり、特に偶像崇拝する民族に“勝利する”ことである。自分たちは“神に帰依している”のだから、神と“一体になって”勝利を勝ち取らねばならない。神と一体になることが出来れば、民族・同胞・子孫が幸福になることが出来るだけでなく、自分自身も“神と同様”に血族・子孫から称えられる。そして、死後世界でも「天国」へと召される。この方程式に対して、それを“完全否定”して、改めさせられるのは“穏健派のイスラム教徒”たち以外にはない。本当にテロを無くそうと思うのであれば、アラブ民族でもなく、それでいて国民の大部分がイスラム教徒の国々が一体となって真摯に取り組まなければ解決できない問題なのだ。
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