その事件はパリで起こった。被害者は日本人男性30歳。犯人は逃げる際に自分の携帯を落として行った。したがって、もしかしたら犯人は捕まるかもしれないし、盗み取られた腕時計は戻るかもしれない。ただ、こんなことを言うと被害者から叱られるかもしれないが、まるで“ドラマのような事件”であり、それほど同情しなくても良いのかもしれない。なぜなら、30歳で9000万円もする高級時計を身につけていた人物なのだ。おそらく、彼にとって“その程度の被害”は人生を狂わせるようなものではない。そういう事件が、実はパリでは最近頻繁に起こっているらしい。それにしても、どうやって奪ったのか。実は被害者は泊まっていたホテルの玄関の手前で腕時計を奪われたのだ。もちろん、自分の腕につけていた時計である。被害者の失敗は、五つ星のホテルの玄関前でタバコを吸ったことにある。ポケットからタバコを取り出し、ライターで火を点ける。その時、人は一瞬だが両手がふさがってしまう。そうしてタバコをポケットに仕舞おうとした時、男が近づき「すまないけど僕にもタバコを一本貰えないか」と声をかけて来たのだ。こういう時、日本人はあまり警戒心を抱かない。欧米人は無視する人が多いが、日本人の多くは接近してきた人の声掛けに応じてしまう。被害者も気安く応じてタバコを抜き出そうとした。その一瞬を犯人は見逃さなかった。煙草を口にくわえているので声を出せない。素早く腕を掴まれ、その手首から腕時計を外してしまったのだ。一瞬の出来事であり、言葉も発せられない。犯人の手を捕まえようとしたが振りほどかれた。けれども携帯電話だけは落として逃げ去ったのだ。盗まれたのはスイス製の高級腕時計「トゥールビジョン・ダイヤモンドツイスター」という製品で、かなり分厚く大型である。そういう方面に詳しい人が見れば“お宝”であることがすぐにわかる。多分、ホテルを出たときから狙われていたのだ。私は自分自身がイギリスで出遭った集団を思い出す。5~6人が肩を組み、後ろから接近してくる。あの頃は「日本人パスポート」がよく狙われた。陽気に歌いながら接近してくると、奇妙には思っても、自分のパスポートが狙われているとは思わない。後になってバッグのファスナーを開けられていたことに気付いたが、幸いパスポートは無事だった。もう一つ想い出したのはフランス映画で、それこそスリの新米が腕時計を盗み取る訓練をする場面だ。どうやって訓練をするのかというと、テーブルの足に腕時計を巻いて、そこからいかにして早く腕時計を外すか、マジシャンのように素早く外して傍にいる仲間に手渡すか、その訓練を続けるのシーンだ。おそらく、今回の犯人も似たような訓練を重ねていたのだろう。それにしても、30歳で9000万の腕時計を身につけパリの五つ星ホテルに滞在していた人物とは、いったい誰なのだろうか。
オリンピックを「平和の祭典」というふうな表現をしていたのはいつだったろう。いや、今でもだろうか。まさか、もう誰もそんなことは信じない。いろいろな意味で、オリンピックは汚れてしまった 続きを読む
ときどき“ややこしいこと”をする人がいる。そしてそれが妙に注目を集めて、欧米においては“寵児”として人気者になったりするケースも多い。そういう人物の一人が「アヤ・ナカムラ」だ。果た 続きを読む
わたしは動物たちに関して詳しくないのでわからないが、犬は「飼い主」を求める性質を持ち、猫は「飼われた家」を求める性質を持つ、ということは知っている。つまり、どこまでも飼い主を捜し求 続きを読む
国家の“経済運営”に大きな役割を果たすのが中央銀行の「利上げ」と「利下げ」の決断だ。現在、その「利上げ・利下げ」の両方で、日本とアメリカ…それぞれに“決断の時”が訪れようとしている 続きを読む
近年、アスリートたちの“早熟化”が進んでいる。あらゆるスポーツの分野で、幼い頃からの“英才教育”とでもいうか、特別指導が行われていて、それが実を結んで、早くからその能力を存分に発揮 続きを読む
世間の9割方が、今回の米大統領選は「トランプで勝負あった」と見ていたのに、ここにきてバイデン現大統領が「撤退」を表明。現副大統領である「カマラ・ハリス女史を推す‼」と方針転換した、 続きを読む
“時代の変化”はどうしようもなく、やって来る。それは誰しもが経験することで、どの年齢の人たちもが、いずれは感じるようになる。問題は、その変化に“自分を合わせて”生きて行けるかだ。こ 続きを読む
異常気象というのは、時として思いもかけぬ「発見」をもたらす。ブラジル南部を襲ったのは記録的な豪雨だった。それによって多数の地域で洪水とか土砂崩れなどが起こったのだが、それによって視 続きを読む
その名前は確かに父親が日本人であることを物語っていた。ファビオ・トシロウ・キクオ氏(42歳)は、6年間交際した相手であるブルーナ・ビジャリーニさんとの結婚式を無事に終え、翌々日には 続きを読む
第171回目の直木賞が、一穂ミチ氏に決まったという。最初は同人誌でボーイズラブ小説を手掛けていて、それが編集者の眼に止まり、近年、一般小説に転向していった作家らしい。それは良いのだ 続きを読む