北海道はもう雪に包まれる季節になった。そう“雪に包まれる”という表現がぴったりの街並みがやって来る。そして、そういう季節がやって来ると誰もが、黙ってはいても“故郷”や“父母”を無意識に思い出す。不思議なことに、年末が近くなると、誰もが子供時代を思い出すように出来ている。それは“雪”のせいなのか、“寒さ”のせいなのか、“クリスマス”や“正月”行事せいなのか、一年の“一区切り”を感じるせいなのか、誰も解からない。みんなどこか急いでいて、みんなどこか忙しそうで、みんなどこか寒そうに襟を立て、そしてどこか寂しそう。別に寂しいことなんか何にもないのに、だけど寂しそうで、ほろりと涙をこぼしたりする。やっぱり、“年末”には何かがあるんだ。人を昔に誘う何かがあるんだ。子供時代に誘う何かがあるんだ。故郷とか、父母とか、子供の頃の友達とか、昔の街並みとか…蘇らせる魔法がある。冬に向かうとき、人は誰かと一緒に居たくなる。一人ぼっちの冬は嫌なんだ。だから幼い頃の街並みや、温かいストーブや、家族の笑顔や、ほっこりの想い出を抱きしめたくなる。私は4~5歳の頃、いつも部屋の片隅で膝を抱えながら、ひとりで家族を待っていた。父は昼も夜も働いていたし、母はいつも病院を出たり入ったりしていた。兄や姉は幼いのにアルバイトをしていた。私だけひとりで部屋の片隅で家族を待っていた。だから、私は空想好きになった。クリスマスには本当にサンタクロースがやって来ると、かたくなに信じていた。確かにやって来たが、ささやかな“お菓子”だけで、自分が要求したプレゼントとは違った。それで母親にそう言って抗議したら、困ったような顔をしながら黙って頭をなぜてくれた。母親はやせていて、その手は筋張っていたけど、凛として強かった。クリスマスは街だけが騒いでいて、我が家はささやかで、だけど母親が病院から戻っていて、それだけでとっても楽しかった。
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