人には、みんな“それぞれの時間”というものがあります。ここでいう「時間」とは“何時何分”という時間とは少し違います。ニュアンスとしてわかりやすいように言えば“期間としての時間”という意味です。例えば“生まれてからの時間”、“死ぬまでの時間”、“この仕事をしてきた時間”、“二人で過ごしてきた時間”、“学び始めてからの時間”、“別れてからの時間”、“生まれ故郷での時間”、“この家で過ごした時間”…数え上げればきりがありません。普段はあまり意識していない「時間」ですが、それを“意識せざるを得ない状況”に追い込まれることが人間にはあります。うろたえてしまうほど不意に「有限の時間」を“わたされてしまう”ことがあるのです。そして、そういう時「時間」はとてつもなく長く、あるいは短く、私たちに“重くのしかかって”来るのです。極端な例が「死の宣告」です。「余命一年」などという医師からの宣告です。そうすると厭でも「時間」を考えないわけにはいきません。考えるというより“意識する”ようになるのです。会社勤めの方なら「定年」とか「リストラ」とか「転任」とかが“わたされた時間”となります。「婚約」とか「出産」とか「閉経」とかも“わたされた時間”を意識する事柄です。こういう風に、人生には必ず“わたされた時間”を意識せざるを得ない場面というものがあるのです。人はそういう時、あらためて「運命」というものと向き合うのです。どんなに日頃「運命などない」と言っているような人でも、時間を“わたされる”と、これまでの生き方、これからの生き方、そして“見えない存在”を意識するようになるのです。そうして何よりも「時間」が妙に“愛おしく”なるとか、逆に“怖く”なるとかするものです。
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