大昔、オリンピックは「参加することに意義がある」と言われた。今はもう誰もそんなことは言わない。それは「順位」が重要だからである。「国」の威信が掛かっていたり「個人」の運命が掛かっていたり「企業」の繁栄が掛かっていたりするからだ。けれども、その原点は言うまでもなく古代ギリシャにある。そして、その大会目的には「美にして善なること」を掲げていた。「美」はともかく「善」の方は、スポーツ競技ではなかなかに難しい。昨年の12月9日、宮崎で「青島太平洋マラソン」というものが行われた。実は昨日、それに参加していた10名に大会の実行委員会から「感謝状」が贈られた。彼らは誰ひとり入賞はしていない。けれども表彰されたのだ。実はその競技に大分から参加していた60代の男性が競技途中で突然倒れたのだ。徐々に崩れ落ちたのではなく、突然倒れた。丁度すぐ後ろを走っていた消防士の山本大祐氏はとっさに手を伸ばし、転がり落ちそうだった身体を支えて安全な場所へと移した。声をかけたが反応はなく、脈も止まっていた。即座に気道を確保し、救命措置を施した。倒れた人がいるという声を聞きつけ駆け付けたのが救急救命士の浜砂憲治郎氏だった。彼は素早く人工呼吸を始めた。そのうち消防で救急係をしている浜畑貴晃氏にも噂が伝わった。彼は逆方向のスタート地点に向かって走り出し、やがて心肺蘇生に役立つAEDを持って登場する。これによる電気ショックを与えて蘇らせようとしたのだ。実際2度目のショックで心肺は見事に蘇ったのだ。やや遅れてやってきた救急車には救命救急センターに勤める安部智大医師が駆けつけて飛び乗った。こうして青島太平洋マラソンに参加していた人物たち総計10名の見事なリレーで一命はとりとめられ、心肺停止となった男性もようやく職場復帰することが出来た。それを待っての今回の「感謝状」であった。それにしても、まったくの偶然ながら、そういう時に必要なメンバーが見事なまでに集まっていた大会であった。ドキュメンタリーのカメラマンが居なかったことだけが妙に悔やまれる。
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