現代アートにはときどき“意味の解かりずらい”作品が登場する。昔ながらの芸術は美術館に展示されるが、現代アートの場合は“美術館で視る”とは限らない。ということで、スペイン北部にビルバオという大きな街がある。この街には世界最古の運搬橋が掛かっているネルビオン川とグッケンハイム美術館があることで知られている。けれども「ビハール(バスク語で「明日」)」という作品は、この美術館の中にはない。運搬橋で有名なネルビオン川の方にある。メキシコの芸術家ルーベン・オロスコ氏の作品なのだが、120㌔のグラスファイバー製で2.5mもある「美女の顔」は、やや斜めに“浮き上がる”ような角度で水面上に浮かぶ。もし、これが“普通の大きさ”だったら、間違いなく「美女の水死顔面」と勘違いしてしまうだろう。しかも、この顔面だが、常に“浮き上がっている”わけではない。潮の満ち引きによって、水面上に浮き出たり、ほぼ沈んだりする。或る意味では、アートというより科学実験製品のような趣もある。しかも、その“浮き出る時間”“沈んでいく時間”が図表で公開されている。どうして、こんな作品を作ったのか。実はこの作品は、地元銀行の“キャンペーン”として依頼されたもので「ビハール(明日)」という作品名には深い意味がある。つまり、このまま急速に“地球温暖化”が進めば、海面が上昇してきて、ビルバオという街自体も沈んでいくかもしれない。「私たちの行動によって、私たちが水中に沈んでいくか、水面に顔を上げて生きられるか、試されている時代である」ということを表現したかったそうである。もちろん、そのこと自体は十分に理解できるのだが、私は別な意味から、この作品を捉えてしまった。つまり、われわれの「運勢」というのも、最終的には自分自身の“生き方”や“在り方”によって、将来的に“浮上”していくことが出来るか、或いは“沈んでしまう”のかが、無意識のうちに選択している部分があるような気がするのだ。
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