近年、日本の高級ホテルには“国内の富裕層向け”というよりも、あきらかに“海外の富裕層向け”と感じられるような“仕掛け”や“工夫”が多い。今回の場合なども、もしかしたら“海外向け”的な要素が強いのかもしれないが、京都にあるホテル「ザ・プリンス京都・宝ヶ池」が、“開業35周年(10月9日)記念”として行っているのが、京都の伝統的芸術家たちの作品をホテル内にて展示・販売する新しい試みだ。日本の古典的な芸術作品というのは、その展示される“場”の雰囲気によって、あきらかに価値が違ってくる。デパートの展示場にあるより、京都の高級ホテルのような雰囲気の中にあって、より“輝きを増す”ことは疑いようもない。今回、展示・販売される工芸品は安土桃山時代から400年以上も続く陶芸技法の継承者である加藤亮太郎や松林豊斎氏の作品群である。茶碗・花瓶・酒器など40点の方は、ホテル内の“クラブラウンジ”の方で展示されている。また、京都の若い作家たちの抽象絵画9点も公共スペース壁面の方で展示・販売している。このホテルでは、少しでも伝統的な京都の芸術家たちを支援すると同時に、世界に向けて日本の“伝統芸術”を発信していこうという意識を持っているようだ。確かに、国内の富裕層だけでは“日本の芸術”を守って継承していくのは難しい時代になっている。海外からも高い評価を受けているのが“安土桃山時代の芸術”なのだ。ただ一点だけ私が気になったのは、“京都の芸術”だけに限定しているような気がすることだ。日本には京都以外でも、さまざまな地域で“優れた技法”が伝承されている。それらを、どう守り、どう伝えていくかは、今後の日本人に残された大きな課題と言える。昔は絵画の展示・販売と言えば、美術館やデパートの催事場と決まっていたが、最近は一部のおしゃれなカフェ・レストランなどでも絵画の展示・販売を見掛けることがある。若い作家の作品などは、かえって“そういう場所”の方が、おしゃれな雰囲気に溶け合って価値を生み出すことも多い。欧州などと違って「気軽に絵を飾る」という慣習が日本にはない。もう少し、さまざまな場所で、ごく自然に“芸術”と向き合う、或いは触れ合う場所が多くなれば、近年の“ゆとり無い心”に“余裕”が生れて来るのではないだろうか。
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