世の中の多くの人は「金運」というものには“目がない”ようだ。したがって「金運」を約束してくれる神社には人が集まる。そこで街の“有志”たちは考えた。「そうだ。鳥居を金ぴかにしてしまおう」こうして、有志達の寄付金で、その鳥居は金ぴかになった。そのかいあって、古びた小さな神社はまたたく間に有名になっていった。そして続々と観光客や参拝者が訪れるように変わった。人通りの乏しかった姉小路界隈に活気が戻った。ところが、神社の敷地は狭く、隣接してマンションがどんどん立ち始める。ほぼ並行して“金色の鳥居”はマスコミでしばしば取り上げられるようになった。特に“夜間の照明時の神社”はインスタ映えがする。なぜか、それに飛びついたのは中国人観光客だった。こうして、夜間になると何十メートルにもわたって行列が出来るようになった。多い時には200mだ。こうなると、もう、静かに“参拝”という雰囲気ではなくなる。うるさいだけでなく、ゴミ捨ても多くなった。路上駐車も目立つ。最初、賑わいを取り戻そうと“金ぴかに変わった鳥居”だったが、隣接しているマンションの住民にとっては夜の騒音で耳栓をしないと寝られぬ事態となってきた。夜間の拝観だけでも止めてもらうようには出来ないものか。神社側は“警備員を増やす”等の措置を講じることにした。ところで、この神社、本当に「金運」を約束してくれるのだろうか。「御金神社(みかねじんじゃ)」という名称は古来からのものである。ただ住宅街の一角の“狭い敷地内の神社”であるのには理由がある。元々この神社は“刀の製造に携わった者達”のため建てられた神社で「金山昆古神」が主神である。京都で唯一の“金属の守り神”だ。だから「御金神社」なのだ。確かに貨幣も金属と言えるが、お札は金属ではない。ところが、どういうわけか、ここの神社の“銀杏型絵馬”には「お蔭様で宝くじが当たりました」という報告“お礼”の内容が多い。そのせいか、ここで求めることが出来る「福財布」に入れておくと当るという“噂”が流れている。また金の銀杏が刷り込まれた御朱印が“金運を呼ぶ”という評判もある。隣接するマンション住人からすれば“金の亡者”にしか思えないマナーの良くない中国人観光客たちを、追い払って良いものかどうか“金の鳥居”は悩んでいる。
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