確かに大自然は人間世界の“小ささ”を実感させてくれる時がある。大自然は、あらゆることに動じず“永遠の営み”を繰り返している。もっとも、そう感じるのは一瞬で、日々のあわただしさの中で、そう感じたことさえもどんどん遠のいていく。けれども、無人島に暮らしていると、それは常に実感することらしく、世間的な出来事とか人間社会の変化そのものも“ちっぽけなこと”として過ぎていくらしい。無人島に暮らして28年のマウロ・モランディ氏によれば大自然から見た人間は「蚊とそれほど違わない存在」であるらしい。彼は1989年に偶然この島を訪れた。正確にいうと、訪れたのではなく、船のエンジンが故障して漂流し、強風にもあおられ、いつの間にか打ち上げられた陸地がイタリアの西にあるブデッリ島だったのだ。この島は無人島であったが、国の管理下に置かれていた。そこで、時折、管理人がくる。その管理人男性と島で出逢ったのだ。そこでモランディ氏は、自ら乗ってきた船をその男性に譲る代わりに“管理人業務”を自分に引き受けさせて欲しいと願い出た。交渉は見事成立して、その時からモランディ氏はその島の管理人となったのだ。元々、都会暮らしに疲れていた彼は、誰もいない孤島で黙って海だけを見つめて暮らす生活にすぐ馴染んだ。そうやって日々過ごしている内に、大自然の悠久の営みに比べれば、人間世界の出来事すべてはちっぽけすぎ「蚊と違わない存在なのだ」と理解するようになった。実は一時的に、彼が無人島に住み続けていることが問題視された時期があった。けれども、大勢の人たちが署名してくれたおかげで追い出されずに済んだのである。確かに水平線を見つめ続けると、人間はどんなに頑張ったところで“大自然”には勝てない。悠久の営みを変えることは出来ない。人間はしょせん“地球生命体”にへばりつく「蚊」のような存在でしかない。地球上の征服者のように勘違いしているが、実は“地球という掌”で上手く転がされている命と意識すべきかもしれない。それでも、大自然にも時々寂しい時があって、意図せずして無人島に辿り着いたモランディ氏は唯一“友達”として引き寄せられたに違いない“大自然の玩具”なのだ。
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