「初めに言葉ありき…」は『聖書』の冒頭に出て来る一節だ。人間は「言葉」を持ったことで高度な文明を築くことが出来た。それだけでなく、言葉は“生きる源”でもある。それを象徴していたのが衣笠祥雄氏死去のニュースだ。彼は4月19日のTV解説を行っていた。その後、体調が急変して亡くなったらしい。ただ19日は声が出ていなかった…ということでTV中継の時から心配の声が上がっていた。絞り出すような声は聴きとれなかったらしい。彼の横で急きょ解説を担当した槇原氏も心配だったとコメントしている。私は亡くなる前に新曲を自宅で吹き込んだ歌手・島倉千代子氏の声を思い出した。彼女も、必死に歌っていたが、その声にはもはや“生命力”がなかった。人間というのは、生命力が失われていくと「声」が奪われていく。日頃、どんなに威勢の良い人でも、声に力がなくなると第一線では働けないものだ。逆に、どんなに重病でも、声に力があるうちは心配ないものである。そういう意味では“生命力”を必要とする職業、例えば政治家や実業家やスポーツ選手などは声が弱くなると活躍できない。最近の貴乃花親方は口数も乏しかったが、声にも力がなかった。口数が乏しいと言えば、政治家の浜田幸一氏も亡くなる前には声に力がなくなった。「ハマコー」の愛称で知られ、TVに出る機会も多く、政治以外でもお茶目な印象で人気があった。彼の言葉には「力」があった。或る種の「間」と「力」と「余韻」を持った声や言葉は、人を惹きつける。大昔、一度だけ彼の講演会に行ったことがある。二階席までびっしりと客席が埋まっていたのには驚いたものだ。もはや政治家を引退した後だったのに、漫談師のように笑いを取りながら演談を進める手法はさすがだった。金銭トラブルの絶えない人物だったが、日本の行く末を“浪花節”的に憂いながら逝ってしまった。
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