今から30年ほど前まで私は「ヘビー・スモーカー」だった。多い時には一日で60本のたばこを吸った。次から次へ…という具合だった。当時、借りていた部屋の壁は黄色くなって、窓ガラスも汚れ、大きな灰皿には吸い殻が山盛りだった。たまたま酒の席で、友達と“禁煙ごっこ”をした。破った方が罰金を払うのだ。「ようし、今日から禁煙するぞ!」二人は乾杯をしながら誓い合った。あれから30年以上が経つ。私は、それ以降一度も煙草を口にしていない。最初の一週間だけは、とても辛かったが、それ以降は平気になった。なんとなく、たばこを買いに行くこと自体も面倒になっていた時期だったので丁度良かった。もし、あのまま吸い続けていたなら、間違いなく呼吸器系の疾患になっていただろう。私の若い頃のたばこの本数と同じくらい、つまり一日50本以上喫煙しているのと同じくらいの大気汚染の中にインドの首都ニューデリーが陥っている。子供たちは一週間、汚染対策として臨時休校となった。それくらい深刻なのだ。大気汚染指数が600を示し、それは100の限界指数をはるかに上回っている。どうしてこんなことになったのかというと、大きな原因は二つある。まず、一つは今の時期ニューデリーには強風が吹き荒れやすく、土ぼこりが舞ってしまうこと。もう一つは安くて質の悪い車の燃料が出回っていること。車社会が猛スピードで広がっているインドでは車の走行規制をかけても、なかなかそれが浸透しない。同じようなことは中国の北京でもあった。車社会の急速な普及は、発展する都市部の街をスモッグに変える。かつて日本でも、そういう時期があった。発展途上の都市部が陥りやすい問題に直面している。そうは言っても、子供たちに街に出るな、と言っても実際にはなかなか難しい。海外からの旅行者など、街を歩けないのでは、何のための旅行なのかわからない。もう少し、早目に“手を打つ”ことは出来なかったのか。街中が“砂埃”になるまで放っておくのは、インドらしいと言えば確かにインドらしいのだが“聖なるガンジス”の汚れと共に、未来ある子供たちの身体を汚す。
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