“隠れキリシタン”と言えば、江戸時代の長崎を思い浮かべる。現在でも、その子孫の方々が存在していて“隠れキリシタンの信仰”が維持されている。もう、日本では堂々と“キリスト教徒”を名乗って良いのに、子孫の方々はかたくななまでに“隠れキリシタン”の信仰を維持し続けている。信仰とは奇妙なものである。私は昔、助産婦として生涯を送られた方の自伝の文章添削を依頼されたことがあるが、彼女の記録の中で一番印象として残ったのは、妊婦の病室に貼られた「安産祈願」のお札が何者かによって持ち去られ、仕方なく助産婦の方が真似て「安産祈願」の札を急きょ作って、その後十年以上、その“偽物のお札”が大いに役立った、という話を記されていたことだった。「安産祈願」のお札を盗むという行為にも驚くが、それよりも、急きょ作られた“偽物のお札”が、その後十年以上、その助産院での守護神として実際に機能していたことに驚く。「鰯の頭も信心から」と言うことわざがあるが、考えてみれば“助産婦が書いた安産祈願”の方が、出産について何もわからない神主が書くよりも“霊験あらたか”であるのは当然だったかもしれない。とろこで北朝鮮の脱北者キム・チュンソン氏によると、北朝鮮では「地下教会」と呼ばれるものが1200も作られていて、そこでは正に“隠れキリシタン”たちが祈りを捧げているのだという。本来、北朝鮮では憲法で信仰の自由は認められているのだが、実際には『聖書』を持っていたというだけで、秘密警察によって逮捕され、労働強化刑に処せられる。或いは公開処刑に処せられる。信仰の自由など存在しないのだ。秘密警察は“隠れキリシタン”たちに対して、全裸にして“冷凍室に閉じ込める”拷問を施す時もある。日本の“隠れキリシタン”たちの多くが、十字架で貼り付けられ、海中に没していったのと似たような拷問である。もっとも信仰心の篤い“隠れキリシタン”は、いつの時代でも拷問の中で“神の救い”を求めながら、命を落としていく。
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