時々“奇跡的生還”という言葉が使われる。実際、神秘としか言いようがないような“奇跡”によって、死を免れる人たちが稀に居る。彼カーク・ジョーンズ氏もそういう一人だった。彼は2003年、一つの「挑戦」として落差51mのナイヤガラの滝に飛び込んだのだ。それまで、生きて帰ったのは、救命胴衣だけの状態で流された7歳の少年唯一人だけであった。そんな危険な場所に自ら飛び込むのは“命知らず”の人物だけである。彼は、その「挑戦」に見事成功した。まったく、奇跡的な生還であった。その後も長く、そこは“死の滝壺”となって多数の犠牲者を出した。2009年、またしても或るカナダ人男性が飛び込んだ。誰もが「死」を覚悟したが、何故か、彼は生還した。彼は自殺するつもりだったのだ。2011年8月には日本女性も転落死している。さて、奇跡の生還者ジョーンズ氏だが、今年4月19日に、またしても“奇妙な挑戦”を行った。透明バルーンの中に入ってナイヤガラの滝に飛び込んでみようというのである。彼は53歳になっていた。その後どうなったか、判然としていなかった。つい先日、流れ着いた透明バルーンの近くで亡くなっているのがジョーンズ氏であったことが確認された。彼は、何故“奇跡は二度ある”と思ったのであろう。神は“一度だけの奇跡”を彼に与えた。なぜ彼は、それに満足できなかったのか。或いは、彼も今度は“自殺志願”だったのか。いや、それならば“透明バルーン”など用いない。彼は“透明バルーン”の中から笑顔で手を振る姿を、世界に公開したかったに違いない。2003年の奇跡を憶えている人たちは少なく、今なら“ユーチューブ”で世界に配信してもらえる。再び“奇跡の英雄”として輝かしい日々を送りたいと思ったに違いない。けれども、神の奇跡は、売り物ではない。二度と起こらないからこそ“奇跡”なのだ。
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