大昔「命預けます」という題名の歌があった。それを何んとなく思い出した。多分、それに近い意識を持たないと“出資は出来ない”だろうととも思った。何しろ金額が半端ではない。日本円で2兆1300億円なのだ。それを自らの企業の従業員たちに出資させるのだ。もちろん、孫正義社長自身がその半額以上を出す。つまり1兆円以上もの個人資産を提供するというのだ。当然、社長がそんなに出すのであれば、従業員たちも“身銭”を切らなければならない。もちろん、もし「ビジョン・ファンド第二弾」が成功すれば、何倍もになってそれらは返って来る。実際、その第一弾は“大きな利益”をもたらしつつある。もっとも、その時はサウジアラビアなどの金持ちが出してくれた。今回も最初は“従業員”を頼る予定ではなかったはずだが、いつの間にか“そういうこと”に変ってしまっていた。もっとも孫正義氏は、これまでにもそうやって危ない橋を渡りながら“投資事業”を成功させてきた。今でこそ「ソフトバンク」は大企業だが、最初の頃、今から30年前には“怪しいIT企業”の一つでしかなかった。それにこれまで何度も「倒産だ」という噂が流れた。正に危ういところをギリギリのところで“綱渡り”しながら、現在の日本一の売り上げを誇る大企業にまで成長させたのだ。その手腕は折り紙付きである。もっとも、従業員たちは自分達も出資すると解かって入社してきたわけではない。“身銭”を切るためには覚悟がいる。最終的には「孫正義」という人物に命を預けられるか、ということなのだ。もし、出資して「ファンド第二弾」が大成功すれば、黙っていても“大金”が入って来る。その代り、もし失敗すれば…身銭が失われるだけでなく、自分たちの企業そのものが“危なく”なって来る。何しろ今回は、企業としての「ソフトバンク」からも4兆円近く出資する。だから失敗できないのだ。けれども、実際に出資するところは日本の企業ではない。ほとんどが創立間もない“海外の未上場企業”なのだ。つまりは“未知数の企業”ばかりなのだ。解かりやすく言えば、投資する10社のうち、成功するのは1~2社あるかどうかという世界に賭けるのだ。したがって、投資金が戻って来るという保証はない。但し、何度も言うが、そうやって孫正義氏は成功してきたのだ。その“目利き”には絶対の自信を持っている。こうして、いつの間にか従業員たちは“ギャンブラー”の一員になる。
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