あれは何年前だったのだろう。「幸せの国ブータン」という“ふれこみ”が誰の耳にも妙に記憶に残った。ところが、そのブータンで、現在、若者たちを中心に“自動車ブーム”が起こっていて、20年前に比べて車の数が5倍以上に増えたそうだ。その結果、街は交通渋滞に陥り、恵まれていた自然環境が徐々に破壊されつつあるのだという。地方から都会に出て来る若者が一挙に増えたことで失業率が高まり、ブームが去って観光客も減少しつつある。「国内総生産(GDP)」よりも「国民総幸福量(GNH)」を重視していたはずのブータンだが、国連発表の「世界幸福度報告書」では156ヵ国中の95位と低迷している。国連発表だから信頼できるのかというと、それは大いに疑問で北欧の国々が上位を独占している。だから国連の「幸福度」の基準も首を傾げる部分はあるが、それでも「国民総幸福量」を重視していた国が、世界基準で95位なのは何んともむなしい。実は昨日、興味深い報告が一部で報道された。それは「幸福度日本一」を“売り”にしている福井県からの報告である。今年に入って1月~7月までの万引きの届け出件数が前年同期比70%も増加している署が出て来たというのだ。福井全体でも314件で明らかに増加している。しかも、高齢者による万引きが増えているという。福井県というのは「学力日本一」「体力日本一」「共働き率日本一」で“三世代同居”の多い地域としても知られている。密な地域コミュニティーを活かして、それぞれが助け合って暮らしている地域だというのだ。ところが、そうではないという反論の声も出ている。「女性が一生懸命働いて家計を支え、家のことまでするのが当たり前の地域」と嘆く女性もいる。「女性にとっては不幸度日本一の県」と公言する人までいる。さらに「助け合いは息苦しさに繋がり、隠れてやりたいことも出来ない」近所づきあいなど苦手な人はつまはじきにされる。「結婚はまだか、子供はまだか」と会うごとに言われ続ける。個々の違いを“理解する”という文化が抜けている、というのだ。こうしてみてくると「幸福」というものの基準が、それぞれに違っていて、それは“数字”や“データ”では計れず、「青い鳥」の話ではないが、本当の「幸せの国」も「幸せな街」も、それを追いかけて捕まえられるようなものではないことを教えてくれている。
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