近年の歴史・時代物ブームで“古戦場跡”観光というものが盛り上がっている。それ自体は良いことなのだが、その“古戦場跡”の一つ「関ケ原」で全身甲冑姿の「サムライ」が、山頂に続く階段を登りきったところで待ち構え、観光客に対して「おまえは、西軍なのか、東軍なのか」と威圧しながら刀を抜いて眼前に向けて来たなら、誰でも恐怖を感じてしまう。このほど、関ケ原観光協会が「そういう行為はたとえ冗談であっても絶対にしないでください」との通達を出した。近年、密かにブームとなっているものに「甲冑コスプレ」がある。江戸時代さながらに、全身を鎧で覆い、模造品の刀を差して、そういう姿のまま古戦場に出没する人物たち。一般の観光客は、古戦場跡に来ているので、そういうサムライたちがいると一緒に写真を撮ろうと盛り上がる。おそらく、刀を抜いての威嚇も、そういうコスプレの延長で、映画の一場面のようなつもりで行ってしまった行為かもしれない。けれども、階段を上りきったところで、いきなり目の前に甲冑姿の武士が出て来て刀を向けられたなら、恐怖を抱くのは当然である。しかも、そこは“古戦場跡”なのだ。私が最も恐れるのは、古戦場というのは“多数の戦死者が出た場所”だという点である。それら死者の多くは、きちんと弔われていない。したがって、現在でも怨念を抱きながら“浮遊”している可能性もある。甲冑姿になることで、そういう浮遊霊が憑かないとも限らない。自分自身は“遊び”のつもりでも、その刀に後退りして、階段から転げ落ちてしまう可能性もある。最近は、欧米人たちの間でも“甲冑コスプレ”への憧れを抱いている人たちがいる。欧米人たちにとって、甲冑姿というのは“魅力的”なのだ。確かに、どこかしら“アニメっぽい要素”がある。“なり切りたい”気持ちが解からないではないが、ブームになること自体が“大きな危険”と背中合わせであることに気付かなければならない。
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