潜在的にその人が持っている“素質・能力”というのは、案外、自分自身でも気づいていない場合が多い。広島に住む白築杏奈氏は学校在学中には特別優れた能力を発揮することはなかった。一応、スポーツ系のクラブ活動はしていたが、特に優れた成績でもなかった。地元の高校を卒業して、新幹線の車内販売をする会社に就職し、新大阪から博多間の往復業務を真面目にこなしていた。数年たつと仕事にも慣れ、暇を持て余し始めた。立ち仕事のせいか下半身に肉が付きやすく、それが気になっていた。学生時代とは違って、今は何の運動も行っていなかった。そんなときに「格闘技サークル」のビラを見つけた。そうだ、少し格闘技でも習って、ストレスの発散と運動不足の解消を行い、もう少し下半身も細くできれば…と思った。そういうきっかけで始めたキックボクシングだった。なぜか毎日が楽しくなった。気が付くと、人並外れてジムを訪れ黙々と練習に励んでいた。下半身も細くなったが、それよりも「強くなりたい」という気持ちの方が優った。こうして、いつの間にか新幹線の車内販売は辞めていた。練習の時間が思うように取れないからだ。格闘技のプロになりたかった。なぜか無償に“強く”なりたかったのだ。まるで“格闘技の神”が憑いたようでもあった。生活のためにアルバイトはしたが、それ以外の全ての時間を練習に当てた。こうして念願のプロデビューは果たしたが、なかなか思うように動けず、強くはなれなかった。車内販売の時の方が生活ははるかに恵まれていた。けれども、そんなことはどうでも良かった。ただ強くなりたかった。ベルトを巻いて“頂点”に立ちたかった。それが、そのまま生活の“目標”となり“生きがい”ともなった。他の女性達が男たちに夢中になっていくように、自分は「チャンピオンベルト」に恋をしたのだと思った。そして、ついに、その時が来た。2017年10月、念願の「女子世界フライ級王者」になったのだ。格闘技の練習を始めて十年がたっていた。一年後にベルトを失ったが、2019年4月、今度は「女子世界アトム級世界王者」となった。階級が変わったが、再び世界王者となった。運動不足を解消するため、下半身を細くするため、ストレスを解消するため…何気なく始めた格闘技で、気が付けば「世界女王」と呼ばれるようになっていた。「女王」の割に収入が少なく昼間はトレーナーとして指導もしている。それでも平凡な“車内販売をしていた会社員”は、いつの間にか「あざだらけの世界女王」になっていた。
オリンピックを「平和の祭典」というふうな表現をしていたのはいつだったろう。いや、今でもだろうか。まさか、もう誰もそんなことは信じない。いろいろな意味で、オリンピックは汚れてしまった 続きを読む
ときどき“ややこしいこと”をする人がいる。そしてそれが妙に注目を集めて、欧米においては“寵児”として人気者になったりするケースも多い。そういう人物の一人が「アヤ・ナカムラ」だ。果た 続きを読む
わたしは動物たちに関して詳しくないのでわからないが、犬は「飼い主」を求める性質を持ち、猫は「飼われた家」を求める性質を持つ、ということは知っている。つまり、どこまでも飼い主を捜し求 続きを読む
国家の“経済運営”に大きな役割を果たすのが中央銀行の「利上げ」と「利下げ」の決断だ。現在、その「利上げ・利下げ」の両方で、日本とアメリカ…それぞれに“決断の時”が訪れようとしている 続きを読む
近年、アスリートたちの“早熟化”が進んでいる。あらゆるスポーツの分野で、幼い頃からの“英才教育”とでもいうか、特別指導が行われていて、それが実を結んで、早くからその能力を存分に発揮 続きを読む
世間の9割方が、今回の米大統領選は「トランプで勝負あった」と見ていたのに、ここにきてバイデン現大統領が「撤退」を表明。現副大統領である「カマラ・ハリス女史を推す‼」と方針転換した、 続きを読む
“時代の変化”はどうしようもなく、やって来る。それは誰しもが経験することで、どの年齢の人たちもが、いずれは感じるようになる。問題は、その変化に“自分を合わせて”生きて行けるかだ。こ 続きを読む
異常気象というのは、時として思いもかけぬ「発見」をもたらす。ブラジル南部を襲ったのは記録的な豪雨だった。それによって多数の地域で洪水とか土砂崩れなどが起こったのだが、それによって視 続きを読む
その名前は確かに父親が日本人であることを物語っていた。ファビオ・トシロウ・キクオ氏(42歳)は、6年間交際した相手であるブルーナ・ビジャリーニさんとの結婚式を無事に終え、翌々日には 続きを読む
第171回目の直木賞が、一穂ミチ氏に決まったという。最初は同人誌でボーイズラブ小説を手掛けていて、それが編集者の眼に止まり、近年、一般小説に転向していった作家らしい。それは良いのだ 続きを読む