かつてのプロボクシング世界ヘビー級選手権者だったモハメド・アリ氏が亡くなった。今から40年前、当時、人気・実力とも絶頂期だったNWF世界ヘビー級選手権者だったアントニオ・猪木氏は「プロレスラーとプロボクサーの世界王者同士の対決」を企画し、日本で実行した。リングサイド席が10万円という現在でも高額の料金だったが、あっという間に完売していた。両者は、開催直前までルールで折り合わず、アリ側は帰国作戦で揺さぶった。結局、プロレスラーにとっては極めて不利なルールを猪木側は飲まなければならなかった。ただ“現役の世界チャンピョン同士”ということで、実況中継が世界の隅々まで流された。それによって“世界的名声”を得たのは猪木氏の方だった。けれども試合そのものは実に“つまらない”ものとなった。プロレス技の多くを禁止された猪木はボクシングと似たようなスタイルで闘うしかなく、アリは捕まえられることを恐れて距離を取った。結果、どちらも“睨み合う”試合スタイルとなり、時折、猪木が“足蹴りを入れる”だけの試合となった。結局、最後までそれだけだった。激しい試合を期待していたファンは納得せず、ブーイングの嵐となった。当時の猪木は酷評された。“引き分け”たのだが、“負けた”ような風評であった。ただ「アリと引き分けたサムライ」として、その後の猪木氏は世界的名声を得た。政治の世界に入って後、その看板は役立った。海外における知名度は“顎の長さ”のように抜群だった。実際、猪木氏は怖いものなしで世界に赴き、いつも“金と女にだけ弱く”跪くのだが、それ以外では最強に強かった。一方のアリ氏は、後年パーキンソン病を患うなど身動きもならなくなって、チャンピョンの面影はなくなったが「人種差別と闘った勇者」として評価され続けた。あの試合のように、人生というリングに“本当の勝者”はいない。
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