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今日の迷言・余言・禁言

未来と運命に対するヒントがいっぱい


日本に多い「責務としての労働」意識の危険性


人が生きていくうえで「働く」ということの意義は大きい。100歳以上の長寿者たちの簡単な生涯をまとめたものを読んだとき、そこに出て来る人達の多くが、高齢となっても働き続けていた。働き続けることによって生活のリズムがつくられ、それなりの健康が維持され、或る種の「生きがい」が生まれているように思われた。したがって、そういう意味では「働く」ということは好ましい。ところが「働き過ぎ」はどうなのかというと、これは必ずしも“良いこと”とは言えない数多くの実例がある。11月30日、長崎市で「過労死防止のためのシンポジウム」が開かれた。これに出席していた一人が2017年2月に自殺して後“過労自殺”として労災認定を受けた会社員男性(享年25歳)の母親(68歳)であった。彼女は、そのシンポジウムの中で「若者が長時間労働で命を絶つことがない社会になって欲しい」と生前の状態を語りながら出席者たちに訴えた。彼女の息子は食品の卸売会社に勤めていたのだが、あまりの超過勤務の連続で精神が崩壊し、ついには自殺をした。大学を卒業して入社し、3年後のことであった。通常「過労死ライン」と呼ばれているものは“月80時間以上の超過勤務”だが、この男性の場合の超過勤務は165時間にも及んでいた。つまり“過労死”を招く危険ラインをはるかに超えていた。明らかに会社側の勤務体制に問題があり、本来なら“労働組合”的なところを通じて、或いは“労働監督署”に訴えて、早急に改善を図らなければならない状況だった。けれども、この男性は真面目で大人しかったに違いない。入社1か月目で、母親からの“昼の弁当”を拒否した。「食べる時間がないから、もうつくらなくて良いよ」と言ったのだ。この時点で既に問題が発生している。昼食時間を与えない企業が未だに存在することに私は驚く。もし私自身なら絶対に抗議するだろう。大体、長時間働かせるなら、食べなければ身体が持たないではないか。やがて男性は母親に「仕事を辞めても良いか」と相談するようになる。毎日、深夜にならなければ戻らない息子を見て、当然、母親もそれに賛成する。ところが上司に退職を願いだところ、引き留められたというのだ。この上司こそ“諸悪の根源”だ。息子は「辞めたらほかの人に迷惑が掛かる、自分は若いから大丈夫」と母親に伝えた。その言葉は、そのまま上司の言葉に違いなかった。その後、自殺する一か月前、突然、息子は「頭がおかしい」と言って母親に抱きつき、そして号泣した。もう限界だったのだ。母親はだから、あの時点で強引にでも病院に連れて行って辞めさせるべきだった……といまも煩悶している。「適度に働く」それこそが生きがいを感じながら長寿を全うする秘訣なのだ。
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