今年は“自然災害”が多い。日本だけではなく、世界的に多い。次から次へと報道されていくことで、或る種の“マヒ”のようなものが起こる。なんとなく、大した災害ではなかったかのような“錯覚”が生まれるのだ。半月ほど前に起きた「北海道地震」も、それを体験した私自身でさえも、大したことではなかったかのような記憶にすり替えられつつある。けれども、それは私が室内のランプや陶の置物や大きな置時計などを壊した程度で済んだから言えることで、同じ札幌でも、液状化現象が起きた清田区や道路が陥没した東区では、未だ復旧のめどが立たない地域も多い。住宅の崩壊だけで言えば、札幌市が厚真町などよりはるかに多い。清田区里塚で自宅のリフォームを地震の1週間前に終えたばかりの人物がいる。彼は最近、足腰に不安の出てきた奥さんのため、20前に購入した自宅をバリアフリーへと670万円をかけてリフォームし、8月30日に完成したばかりだった。その日は仕事でタクシー会社の営業所に居る時間帯に地震に遭った。すぐ自宅へと駆け付けると、奥さんは家の中で寝たままの状態であったらしい。玄関が地震により開かないので、庭の窓から奥さんを戸外に救出した。これで二人の生命は確保された。この時点では、家は見た目だが傾いていなかった。ところが、それから徐々に“家の傾き”が始まる。液状化現象で陥没と土砂流出が始まったからだ。そうして半日くらいの間に、完全に自宅は役所の係員から「危険」の赤紙を貼られる住宅へと変わった。もう、とても住める状態ではない。こうして被災者用の公営住宅が与えられることになったが、今、空きがあるのはエレベーターのない4階や5階が多く、障碍者手帳を持たない奥さんは“足腰が悪い”と言っても通用しないのだ。自然災害には、このような一般報道だけからではわかりにくい“運・不運”がある。よく火災に遭って“焼け太り”するような幸運な人もいれば、わずかの違いで“命を落とす”とか、すべての“財産を失う”人もいる。そして“不運”な人は「悪魔の爪痕」にもがき苦しみながらも、どこにもそれを訴えることが出来ず“爪痕”と共に生きていくのだ。
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