もちろん犯罪には厳正に対処しなければならない。けれども、そんなに欲しかったんだな…と同情してしまいそうになる事件もある。慶応大学理工学部の敏腕教授が、その敏腕にモノを言わせて“2枚で400円”の下着を盗み、走り去ろうとしたのだ。ところが、その姿に気付いたのは奥さんではなく、窓越しに見ていたご主人の方だった。そしてご主人は、その敏腕教授をどこまでも追いかけ御用としたのだ。お手柄ではある。だが、何となく、昔のコントっぽい話だ。アパートの軒下に下着を干す。その“干された下着”を欲しくなる男がいる。それは何となく理解できる。私も十代半ばくらいの時には、そういう願望があった。いただけないのはご主人の居る人妻の下着を狙ったことだ。しかも、ご主人が何気なく窓の方を見ているときに狙ったことだ。“2枚400円”の下着を慶応大の教授が握りしめて走り去ろうとするのを、そのご主人は追いかけて、追いかけて、どこまでも追いかけて、捕まえたのだ。ところが、盗品というのは、必ず、何を盗んだのか、その品物が、いくつで、いくらの商品なのか、警察署内で記録しなければならない。当然、盗まれたモノは丁寧に包装されてから返されることもない、その2枚の下着を握りしめて今度は家に戻らなければならない。じろじろ見られても、走り出すことは出来ない。“2枚で400円”を屈辱には感じなかっただろうか。また、盗んだ教授の方も、どうして“2枚で1万円”くらいのものを狙わなかったか、と後悔はしないだろうか。しかも、ご主人が窓の方を見るというのは、相当に“暇なとき”に限られる。ご主人が暇を持て余しているとき狙うなど最低だ。基礎の基礎からやり直しだ。慶応大の教授だというのに、どうしてそんなにとんまなんだ。敏腕教授と言われているのに、腕が落ちたのか。だから家の中に居たご主人に、すぐ走って逃げたのに捕まえられたのだ。相当なスピードで追いかけて来たのだ。逃げる教授も必死だが、追いかけるご主人も必死だったのだ。なんか友情が生れそうな話ではないか。それにしても“2枚で400円”はどう考えても“セクシーな下着”ではない。それなのに、なぜ盗みたくなったのだろう。“洗い立て”なら臭いもシミもついてはいない。それなら「真新しい下着」を自分で購入した方が、罪に問われることもなく、良いような気がするのだが…。
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