最近、芝崎みゆき著『古代エジプトうんちく図鑑』(バジリコ株式会社刊)なる本を読みました。帯に、日本のエジプト学の権威である近藤二郎氏が「推薦の言葉」を寄せていますが、私もタロットの解説で、古代エジプト文明に関することを述べている関係上、その参考書として、心から推薦したい一冊となりました。
この本の何よりも素晴らしいところは、この一冊が、古代エジプト文明の入門書、研究書、歴史解説書、思想解説書、種々な仮説比較書、旅行案内書、人物伝等をことごとく兼ねていることです。しかも、一般の日本人にとって理解しやすいように、判りやすく、分類し、整理されて書かれてあることです。
さらに、もっと驚くことは、完全な手書き本で、全く活字を用いていないことです。通常、手書き本というのは、文字数が少なくなることが多いものですが、この本は逆で、300ページにも渉って、細かな読みやすい文字でぎっしりと書かれてあって、しかも、図解も全て著者本人が描いているので、漫画による歴史本のような感覚で、一般の方が読みやすい雰囲気作りを心がけているのも好感が持てます。
写真が全く使われていないのも、古代エジプト関連の本としては珍しく、それを無数のイラストで補っている苦心の作ともいえます。
エジプト学の権威・近藤氏も「推薦の言葉」で指摘しているように、一人の女性が独学で挑み、古代エジプトの歴史と文化をここまで描けたのは賞賛に値するものです。
特に、私が好感を持ったのは、彼女がさまざまな仮説を日本人の視点から、偏りなく紹介していることで、どの仮説にも取り込まれていない点が素晴らしいと思います。それは、必ずしも私と同じ視点ではないのですが、一般の日本人の方達に、まず古代エジプト文明というものを理解していただくためには、このような書き方が一番良いに違いないからです。
もう一つ、この本の素晴らしい点は、入門書であると同時に研究書にもなっていることです。通常、一冊の本からだけでは到底学び得ない知識が、無駄なくぎっしり詰まっていて、ある意味では何十冊ものエジプト本を読んだのと、同じような厚みあるエジプト文明の全体像が、読者に把握できる仕掛けとなっているからです。
もちろん、彼女のようなエジプト文明の捉え方が、正しい捉え方であるかどうかには疑問もあります。特に、古代エジプトの神々に対する捉え方、思想の根底にあるもの、ピラミッドなどに関しては、私は、彼女が紹介しているような一般的捉え方とは異なった考えを持っています。ただ、そういう私の捉え方にしても、元々はこういった基礎的知識からスタートしていることは否めません。
そういう意味でも、この本に書かれてあるような基礎的知識を持った上で、私のタロット秘解を読まれると、より以上に私の真意、タロットの真実を汲み取っていただけるのではないかと思うのです。古代エジプト文明は、奥の深い文明だからです。