最近はアントニオ猪木氏をはじめとして“闘病”している元プロレスラーが多い。80年代や90年代に活躍したレスラーたちは年齢的にも“齢”なので、身体を痛めつける職業の場合、あとになってそれが“病気”という形で表れてくるケースも多い。谷津嘉章氏は元々学生レスリングで無敵の強さを誇り、鳴り物入りで新日本プロレス入りした選手だった。けれども、レスリングの場合“アマ”と“プロ”では大きく異なる。技術的にどんなに優秀でも、気の弱い選手は荒っぽい“プロレス”には向いていない。初期の頃の谷津嘉章選手は性格的に“気弱”で、その部分が“プロレス向き”ではなかった。鳴り物入りで入団した割に、活躍する場面は少なかった。その後、彼はさまざまな団体を“渡り歩く”。しかも、その都度“上層部批判”を行って団体を飛び出している。こういう人は、レスラーでなくても、どの職種であっても、大体が大成しない。もし不満があるのなら、仕事上(彼の場合ならリング上)で、その不満をエネルギーに変えて爆発させれば良いのだ。プロレスの場合には、他の職種と違って多少の“暴走行為”はOKなのだから。けれども、元々性格的に不器用なのか“リング外”でそれを行ってしまう。結果的にあちこちの団体を“渡り歩く”レスラーの典型となった。2019年4月からDDTに参戦していたが持病の糖尿病が悪化し、右足切断を余儀なくされた。その後、川村義肢株式会社の全面的な協力のもと“プロレス用義足”が開発された。彼自身もリハビリに必死で取り組み、今年3月28日には足利市内を「義足の聖火ランナー」として走ることが出来た。そして6月6日には、“格闘技の殿堂”さいたまスーパーアリーナでプロレス四団体の合同興行で“復帰戦”を行うことが決まった。「時間差バトルロイヤル」という次々レスラーが出てくる変則的な試合だが、それでも逆に多数の若い現役レスラーの舞台に復帰できるのだ。もちろんレスラーは介護士ではないから、容赦なく肢を狙って攻めて来るだろう。そうでなければ「プロ・レス」ではない。その痛みの中で闘って、失っていた“闘魂”を呼び戻してもらいたい。
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