昔から“仏教修行”の一つとして「写経(お経を筆で書く)」や「写仏(仏様を画像として描く)」と共に知られているのが「造仏」とも呼ばれる“仏の彫像づくり”だ。一応、それに必要な用具なども必要なので、あまり普及はしていない。通常、寺院などにある彫像としての「仏様」は“仏師”と呼ばれる専門家が制作するものだが、修行の一環としての「造仏」は、あくまで“修行”や“祈願”を目的として行うので、素人である一般人が心血を注いで行うのが特徴だ。ただ広く普及している「写経」や「写仏」には見本があって、それを丁寧に写し取っていけば良いのだが「造仏」の場合は、それが難しい。手本としての仏像や彫像を見ることは可能だが、樹木や巨石を削って形づくっていくのは本人で、普段、彫像作業などしていない素人は、なかなか最初から“それらしい形”に彫り込んでいくことは出来ない。したがって、最初から「仏様」を彫るというより、徐々にそれらしい形に“近づけていく”のが普通だ。ところが、今から800年以上前の鎌倉時代の一時期、この「造仏」が巷に流行したことがある。どうして流行したのかというと、“願掛け”の一つとして“実際に効果がある”と噂になって広まったのだ。このほど京都府長岡京市にある乙訓寺が所蔵する1.8mの「木造十一面観音立像」を補強・修理のため解体したところ、その内部に“この仏像”が1268年に病気祈願の目的で、わずか一日で制作された「一日造立仏」であることが判明したという。そして記録がある「一日造立仏」としては“最古の仏像”とも判った。“修行”としてよりも“祈願”として、その効能がうたわれたのは単なる「造仏」ではなく「一日造立仏」の方なのだ。文字通り、丸一日のうちに“仏像”を完成させなければならない。しかも、仏師ではなく素人がである。そのためには、相当な練習と研究の日々が必要だったはずである。何もない樹木から一気に“仏像”を彫り出していくのだ。この十一面観音像も決して一日で雑に仕上げたような作品ではなく、細かなところまで丁寧に仕上げられている。したがって、それ以前に相当数の“試作品”を作ったに違いないのだ。おそらく、その人物の中に「仏」が宿って、ごく自然に彫り込んでいくうちに観音像となったに違いない。そうして、おそらく“その祈願”も成就されたに違いない。
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