今から16年前、私はドイツの住宅街を歩いていた。人の少ない通りで、向こうから母子が手を繋いで連れ立ってくるのが見えた。その子は4歳くらいの可愛い男児で楽しそうに歩いてきたが、片腕に大きな「ポケモン」を抱きかかえていた。最初、ポケモンに似ていると思ったが、まさかドイツで“そんなはずはない”と近付いて来る姿を追ったが、まぎれもなく「ポケモン」で、大事そうに抱えている姿が印象的だった。もちろん、ドイツ人の母子で裕福そうな印象を受けた。ほほえましく見送りながら、ヨーロッパの住宅街で既に「ポケモン」が市民権を得ていたことで妙に感動した。日本の漫画アニメがドイツで観られていること自体、当時は知らなかったのだ。あの子はいまいくつになっただろう。たぶん20歳前後だ。今でも「ポケモン」に興味を持っているだろうか。欧米人特有の“人形のような顔立ち”の男の子だったが、見違えるように逞しくなっているだろうか。今、世界中で「ポケモンGO」が大旋風を巻き起こしている。私自身はゲームなど興味がないが、昔、日本で人気を得た漫画アニメのキャラクターが、今や「世界のポケモン」となったこと、いや昔から「世界のポケモン」であったことを改めて想い起させてくれた。数年前、あれだけ“ブーム”となっていた「ふなっしー」はどこへ行ったのだろう。「くまモン」も震災で消えた。新たな形で“蘇ったポケモン”は、不穏さ漂う世界中に“癒し”を与えられるだろうか。なぜか私には大人を虜にする「ポケモンGO」ではなく、漫画アニメの「ポケモン」が子供たちを夢中にさせる姿の方が、大切なことのような気がしてならない。
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