私の義母の死が近い。そういう人々が入院する「緩和ケア病棟」に見舞いに行く。そこでは誰もが“死が近い”ことを意識しながら、それでも必死に生きようとしている。確か作家の渡辺淳一氏だったと思うが、自らが医師だった経験をもとに、人は身近に迫った“死”を受け入れながらでも、本能的に“生きようと努力する”ものだと記していた。一方で、全国の四万人に及ぶ調査で、ここ一年の間に「本気で自殺したいと考えたことがある」と答えた人が成人で“4人に1人いる”ことが分かった。自殺未遂の経験者は53万人と多く、そのうちの半数以上が20~30代の若い人たちである。実際、毎年、2万人以上が自ら命を絶っている。「生きようとする人々」と「死のうとする人々」は、残念ながら“入れ替われ”ない。私自身、十代半ばで“自殺未遂”の経験を持つ。だから「死のうとする人々」に“偉そうなこと”など言えない。そういう時には、周りが見えなくなっているし、将来を悲観しているので、今の“苦しみから逃れたい”一心でしかない。ただ、そのあとで実姉から「生きていたら良いこともあるよ」と言われた一言が今も残っている。若い頃、苦悩しながら生きて来た人には、共通して“人間としての理解力と奥深さ”があるものだ。“死と隣り合わせの体験”を持つ人には、人生を無駄にしてはならないという“身体に染みついた掟”のようなものを感じることもある。“普通に生きていること”が、とても「幸せ」に感じられる日、人はちょっとだけ神様から褒められているのかもしれない。
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