われわれは“運命的”としか言いようのない悲惨な事件や災難に出遭った時、この記憶や体験を“風化させてはならない”と考えがちです。或いはどこにもぶつけようのない“理不尽な気持ち”を持て余し、或る種の“恨み”や“憎しみ”に転嫁しがちです。けれども、そこで立ち止まってしまうと、その人の「人生」もそこで立ち止まるのです。どんなに“輝かしい未来”を奪われてしまったとしても、そこで立ち止まってしまうと「負の部分」ばかりを引き摺って行くことになります。まるで囚人のように「哀しみの重い鎖」を引き摺って行かなければならなくなるのです。どんな偉人も、自分の“過去”を変えることはできません。それは自分自身のことだけでなく、自分の家族や愛する人に起こった出来事も含まれるものです。“変えられない過去”なのに、その時の“記憶映像”や“言い表しにくい感情”を何度も何度も再生し、自ら“引き摺って行こう”或いは“背負い込んでいこう”とする人たちがいます。われわれの潜在意識には“善悪の判別”がありません。何度も映像化され、何度も“想いとして固定化”されてしまうと、潜在意識というのは、それを“現実に投影しよう”とする機能を持っているのです。つまり、未来が“暗いもの”に変えられてしまう可能性があるのです。例えば、愛する人の命を殺人事件で奪われてしまった場合、犯人を憎むのは当然の気持ちです。けれども、そこに固執しすぎると、未来が“失われたもの”になってしまうのです。それによって、犯人に“死を与える”ことはできるかもしれませんが、それで“愛する人が甦る”わけではありません。失ったものは取り戻せないのです。但し“新たな愛する人”を手に入れることはできます。「神」は“前を向く者”の手を、そっと導くのです。
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