ときどき正規の学校教育を出ていなくても“名誉教授”として教壇に立つ人がいる。尾関清子氏は、その典型だった。現在、東海学園女子短大名誉教授の職にある。また立命館大の環太平洋文明研究センターで客員協力研究員を務める。地味ながら「縄文の布」研究では日本の第一人者と言われる存在だ。彼女が“縄文の布”と出逢ったのは50代の頃で、偶然の産物だった。たまたま出逢った“縄文布”がさまざまな方法で編まれていたことに魅了され、どんどん調べ追及していくうちに“専門家”となった。縄文布の地域性や起源など、調べれば調べるほど興味がわいた。だから80代になっても“若く”いられた。そして昨年9月博士論文として「縄文の布―日本列島布文化の起源と特質」を提出、高評価を得て立命館大から88歳で修士課程をとびぬけ「文学博士号」を授与されたのだ。彼女の栄誉は、ただ単に「日本人最高齢で博士号を貰った」ということにあるのではない。われわれ日本人の誰もの祖先である“縄文人”の衣服について、その起源や地域性について、徹底的に調べ上げ解き明かしたことにある。或る意味で考古学研究の“大きな成果”の一つなのだ。おそらく彼女は研究に没頭している内に、“縄文人の霊”が背後に憑くようになったのだろう。そして背後から暗示的に教えてくれたに違いない。彼女があまりに“縄文人”に近づいてくるので、縄文人の方も彼女に何かを授けてやろうと考えたに違いない。尾関氏は“博士号の授与”を「金メダルを貰ったような喜び」と表現したが、一見、努力のたまものに見える「博士号の授与」は、案外、いつの間にか“縄文機織りの世界”へと彷徨いこんだ一人の女性に“ありがとう”の感謝を込めて、縄文人たちから贈られた“真実の証”なのに違いない。
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