私は物事を「運命」というフィルターを通して観る癖がついているので、そういう点から見ても注目すべき実業家は滅多にいない。そういう中で、いつも私を感心させるのがソフトバンクの孫正義氏だ。昨日、正式にソフトバンク傘下の米携帯電話会社スプリントと、ドイツテレコム傘下TモバイルUSが経営統合することで合意した。両社はアメリカの携帯電話会社の首位であるベライゾン、2位であるAT&Tに次ぐ3位4位の企業だが、2強との間には大きな隔たりがあって、このままでは対抗できないところから、統合することが得策であることは誰もが認めていた。ただ一方は日本のソフトバンク傘下、もう一方は独のドイツテレコム傘下、どちらも統合を優位に進めたい思惑があって過去に二度“提携話”がとん挫していた。つまり、今回は“三度目の正直”で合意にこぎつけたのだ。合意が可能となったのは孫正義氏が大幅に譲歩したからである。新会社の名称は「Tモバイル」で「スプリント」の一文字も入っていない。株式比率も、ドイツテレコムが42%、ソフトバンクが27%、取締役数もドイツテレコム側9名、ソフトバンク側4名、明らかに、さまざまな部分でテレコム側有利な条件で統合が結ばれた。それでも、粘り強く交渉を繰り返し、統合にこぎつけた手腕は孫正義氏ならではのものがある。この人は、もっと、もっと先を見据えている。だからプライドなどかなぐり捨て、合意まで持っていったのだ。日本の政治家も、もう少し彼のような“長期的視点”で粘り強く交渉できる人物が欲しい。孫氏はこれまでにも、さまざまな提携とか買収とかを繰り返して、今日のソフトバンク・グループを築いた。その傘下に何千社あるのか知らないが、彼はあくまで“商人”に徹する。彼を“怪しい”と見る人物は多いし、実際に怪しい。けれども、そのスケールが“地球規模”であり、その事業が“未来重視”であることは誰もが認めることだろう。そして何よりも私が、事業家としてのすばらしさを認めるのは、交渉や買収のタイミングにある。実に“絶妙なタイミング”で交渉を仕掛けるのだ。今後、近いうちに米国のCATVとの提携も成立させるに違いない。いつの間にか、アメリカでも“孫王国”を築いていくのだ。
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