通常、家族は最終的に“助け合って”生きていくように出来ているのだが、時として、それが“憎み合う”ような形に変貌してしまうことがある。その場合、血が繋がっている分だけ“嫌悪”が強まり、後々までそれを引き摺るようになる。未解決の“二つの血縁殺人”がある。その一つは、看護師の女性が母親を殺害して、その人体をいくつもに切断し、河川敷などに遺棄したというもので、滋賀県守山市の事件である。もう一つは、水道会社を経営していた姉が、建築会社を経営していた弟を、練炭自殺に見せかけて殺した堺市の事件で、父親の死亡も“殺害の可能性”が出て来ている。看護師の方は既に死体遺棄に関しては自白したようで、母親の殺害や切断などを認めるのも時間の問題かと思われる。私は容疑者が「桐生のぞみ」であり殺害された母親が「桐生しのぶ」であり、まるで“姉妹の名”のようであることに注目した。こういう母娘は、通常は仲が良い。また性質的にも母親の性質を受け継ぎやすい。多分、子供時代には“仲の良い母娘”であったに違いない。いつからか、溝が出来たのだ。母親は娘を医者にしたかったらしい。娘自身も、それを望んだのだがスムーズに行かなかったらしい。進路問題での衝突があったと言われている。そうは言っても、滋賀医科大を卒業し4月から看護師になれたのだから、通常なら妥協・納得すべきところなのだが…。一方の会社経営の足立朱美容疑者の方だが、本人としては“用意周到”に行ったつもりでも、結果的にはそれがかえって怪しまれる原因を作ったようである。弟と同時に母親も眠らせてしまったとか、密室用テープがトイレ外から出て来たとか、“遺書”に普段使わない表現があったとか、朱美容疑者のパソコンに“中傷ビラ”の痕跡が残っていたとか、計画殺人の割にはずさんだった。姉弟で会社経営をしていたが近年は吉凶が分かれ、経営的に苦しかった姉が弟への嫉妬を強めていたらしい。そうは言っても“殺す”という発想は通常出て来ない。もし、父親も“殺そう”として工作したなら、それ以外の“何か”があったと考えざるを得ない。家族間での「闇」が深いだけに慎重な“全容解明”が必要な“二つの事件”である。
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