“編集者の顔”が気になる芥川賞候補作品がある。「美しい顔」という作品を手掛けた編集者の顔だ。この作品は「群像新人賞」を既に獲得している。まだ32歳の“美しい顔”の女性が書いた小説なのだ。私には、この作品のタイトルは最初「美しい顔」ではなかったような気がしてならない。昔「蛇にピアス」という小説が芥川賞を採った時、私は何よりもその“作品名”に才能を感じた。こういうタイトルは余程の才能がなければ付けられるものではない。実際、そのタイトルの“興味深さ”も加わって、受賞作はベストセラーとなった。ところが、のちになって、あの作品名は編集者が付けたもので、小説家本人は“凡庸なタイトル”しかつけていなかったことを知った。おそらく、今回も、作品名は別にあったような気がするのだ。けれども男性(私の勘である)編集者は、美貌の小説家の処女作品は「美しい顔」の方が“売れる”と踏んだに違いない。ところが、思わぬところから「美しい顔」は注目を浴びた。いくつもの場面で他の著者たちが出版した作品の一部が“無断使用”されているというのだ。参考文献にさえも掲げていなかった。これは作家のミスというよりも、編集者のミスなのである。東日本大震災を扱った小説なのだから、何かの記述や著作を参考とすることは編集者なら気付いている。本人は最初から「私は被災者ではない」と公言しているのだ。そうであれば、何かの記述を参考にしなければ、震災の様子を扱った小説は書けない。だから、最初から参考とした5冊の著書を掲げておけば、何の問題もなかった。いや、実際には、少し完璧にコピーし過ぎていた。もし、この作家が本当に“文学的素質”を持っていたなら、仮にそれらを参考にしたとしても、もう少し“表現を変えて”記述するはずなのだ。ところが、この作者は、まるで“模範解答”をそのまま引用する受験生のように、何ヶ所もそのまま転用した。だから、どの部分が転用した箇所なのか、引用された側はすぐに気づき、作家と出版社に対して謝罪を求めた。現在、新潮社と新曜社の二社から“誠意ある対応”を求められている。それに対して、昨日「美しい顔」を世に出した出版社側は“争う姿勢”を明確にした。確かに引用はしているが、だからと言って「この作品の文学性は損なわれるものではない」という理屈だ。この作品をホームページ上で公開し、改めて“文学”のための一部であることを“世に問う”というのだ。そんなことよりも、この「美しい顔」というタイトルは、担当編集者が付けたものではないか、と問いたいのだが。
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