よく“生前”いろいろとトラブルを起こしていた人物が亡くなった時「これでようやく穏やかな日常が過ごせるね」等と親戚たちが話しているのを耳にする。ところが、世の中には“死んでから”もトラブルを起こし続ける人がいる。「麻原彰晃=松本智津夫」は、その代表的な人物のようだ。彼の“遺体”を誰が引き取るかでもめているのだ。一応、本人は“四女”を指名した、とされている。ところが“三女”や妻は、本人にその意思表示ができるわけがない、ということで「待った」をかけている。現在はまだ“拘置所”内にあるらしい。“三女”というのは昔のオウム真理教内においては“次期後継者”に指名されていた人物で、確かにどこか“教祖っぽい雰囲気”を持っている女性である。一方、“四女”というのは“父親としての記憶”がない人物で、むしろ“オウム真理教”とその後継団体への拒絶反応がもっとも強い。単純な図式で言えば“四女”と“三女”が“遺体争い”をしている構図ということになる。その“四女側”には滝本弁護士が付いていて、常にこの弁護士を通じて発信している。したがって、昨日出て来た「太平洋に散骨したい」という言葉は、滝本弁護士の言葉で果たして本当に“四女”の意向なのかどうかはよく解からない。それにしても、死んでからまで“世間に迷惑をかけ続ける父親”というのはなかなかいない。私は、自分の父親が“危篤”となった時、慌てて病室へと駆け付けたが、既にそこに父親はいなかった。いや、実際には、二人の医師たちが懸命に人工呼吸を続けてくれていたのだが、その病室に入った瞬間、そこに“死後の肉体”が横たわっていて、その遺体に対して医師たちが頑張っているとしか私には思えなかったのだ。このようなことを書くと、なんて冷たい奴なんだとお叱りを受けるかもしれないが、魂の抜け落ちた遺体は“単なる肉の塊”でしかない。だから私は、その肉体の傍に寄ることが出来なかった。その後、兄や姉や弟が入ってきて、そういう中で完全に“波形は止まった”のだが、私にはただ単に医師たちが無理に“波形を作っていた”としか思えなかった。“魂の抜け出した肉体”というものは、確かに“父親”の肉体なのだが、もはや“父親”はそこから抜けているので、その後の葬儀でも肉体を見て呼びかけるとか、話し掛けるとか、泣き崩れるとかが、私には“絵空事”に思えてならないのだった。だって、居ないじゃないか、と叫び出したい気持ちをこらえて葬儀は終わった。
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